ブロニー・ウェア『死ぬ瞬間の5つの後悔』を読みました。

【読書日記】『死ぬ瞬間の5つの後悔』ブロニー・ウェア著 仁木めぐみ訳
どんな本?(本の概要)
ヘルパーをしていたブロニー・ウェアと、終末期患者との記録を書いた本。
ブロニーは終末期患者の介護を通して、患者から聞くことが多かった「5つの後悔」を次のように分類しました。
- 後悔①自分に正直な人生を生きればよかった
- 後悔②働きすぎなければよかった
- 後悔③思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
- 後悔④友人と連絡を取り続ければよかった
- 後悔⑤幸せをあきらめなければよかった
この5つの後悔が、終末期患者から多く聞かれたとのこと。
ブロニーは自分が看取ってきた患者を例に出しながら、それぞれの後悔について思いを述べます。
「私たちが死ぬ瞬間に後悔せず生きるためには、どうすればいいのか」を学べる1冊。
学びになった点
死を直視できない現代人
西欧文化の社会では日常から死を閉め出し、死の存在自体を否定しているのに近い状態だ。そのせいで、死を迎える本人もその家族や友人も、誰しも避けられないものである死に実際に直面するとき、まったく覚悟ができていない。人間はみないつか死ぬ。それなのに死の存在を認めるどころか隠そうとしている。まるで本当に「見えないものは忘れられる」とでも思い込もうとしているみたいに。もちろん忘れることなどできない。私たちは目に見えるもので人生の価値を判断しているから、いつも不安なのだ。
ブロニー・ウェア『死ぬ瞬間の5つの後悔』仁木めぐみ訳
現代人は死の覚悟ができていないと言います。
なぜなら、誰も死を直視していないからです。
現代では死を日常から追い出して、死について語ることはタブーとされています。
だれも死について語らないため「自分はいつか死ぬ」という事実を、忘れている状態です。
17世紀のフランスの文学者ラ・ロシュフーコーは「太陽と死は直視できない」と語りました。
現代人は死を直視できないため、自分が死ぬイメージを持てません。
そのため、いざ死ぬときになって絶望することになるのです。
死を直視すれば、大切なことに集中できる
死が迫ってくる前に、誰もが避けられない死に正面から向き合い、受け止めることができたなら、手遅れにならないうちに、人生で大切なものの優先順位を変えることができる。自分にとって本当に大切な事柄にエネルギーを注げる。残された時間が限られていることを意識すれば、たとえそれが何年間か、何週間か、何時間かわからなくても、他人の評価や過大な自意識にそれほど振り回されなくなるだろう。そんなものでなく、自分の心からの望みに従って行動できるはずだ。死は刻々と近づいていて、絶対に避けられないという事実を認識すると、残された時間の中でより大きな目標を達成し、より大きな満足を得るための努力をするようになるのだ。
(同前)
人生で大切なことに集中して生きるためには、自分の死を直視することです。
なぜなら、自分の死を直視することで人生の優先順位を決めて、時間を有効活用できるようになるからです。
自分の死を直視せず、この先何十年も生きると考えていると、
「人生は長いから、いつでもできる。いつかやればいいだろう」
と、大事なことを後回ししてしまいます。
しかし、その「いつか」が来る日は死ぬまで来ないでしょう。
「人生はいつどうなるか分からない。死ぬ瞬間に後悔しないために、大事なことは今すぐやろう」
と、自分の死を直視すれば、大切なことに集中できるでしょう。
後悔①自分に正直な人生を生きればよかった─他人の期待に応え続けたグレース
こうして死に直面し、もう他人にどう思われるかなど気にしていない今、どうしてもっと早くこういう気持ちになれなかったのかと後悔し、激しく苦しんでいる。世間体を気にして、他人に期待される通りに生きてきたが、今になってすべて自分が選んだことであり、自分は先をおそれて何もできなかったのだと気づいたのだ。(中略)自分に正直な人生を送らなかったことというのが、ベッドの脇に座って聞いた一番多い後悔であり、教訓だ。これは気づいたときにはもうどうにもできないので、他の後悔よりも怒りが激しい。
(同前)
緩和ケアの患者グレースは、結婚してから50年以上、周囲に求められる役割を果たしてきました。
良き妻として夫を支え、良き母として子どもたちを育てる。
周囲に期待に応え、自分に求められた役割を果たす立派な女性でした。
しかし、何十年もの結婚生活は、夫が暴君だったせいで辛かったと言います。
夫が老人ホームに入って自由の身になったのも束の間、グレースは不治の病が発覚。
余命僅かだと知ったとき、
「私、どうしてやりたいことをやらなかったのかしら? どうして夫をのさばらせていたんでしょう? どうして強くなれなかったのかしら?」
と、激しく後悔します。
ブロニーによると「自分に正直な人生を送ればよかった」というのが、一番多い後悔だったそうです。
私たちの人生は、他人のためにあるわけではありません。
死ぬ瞬間に後悔しないためには、他人のためではなく、自分のために生きることが大事です。
後悔②働きすぎなければよかった─仕事中毒のジョン
人は往々にして、将来の計画を立てることに時間をかけすぎる。幸せはずっと先になってから手にすればいいと考え、この世の時間はすべて自由になると思っていることが多い。明日があるのかどうか、本当は誰にもわからないというのに。
(同前)
90歳になるジョンは、
「ブロニー、私はあんなに働くんじゃなかったよ。なんて愚かなばか者だったんだ」
と、働きすぎたことを後悔します。
妻のマーガレットから「もっと早く引退して欲しい」と言われますが、仕事熱心なジョンは引退を先延ばしします。
そうしているうちに、マーガレットの病気が発覚して、余命僅かだと知ります。
ジョンは仕事を引退する3か月前に、大事な妻を亡くしました。
この時の経験から、
「仕事は大事だが、仕事を優先しすぎると大事なものから離れていってしまう。バランスが大事だ」
と、ジョンは語ります。
「働きすぎて、本当に大事なものを後回しにしてしまうこと」は、多くの人が経験する後悔だと思います。
後悔③思い切って自分の気持ちを伝えればよかった─母への想いを打ち明けたジュード
「もう遅いってことにならないうちに。いつそうなるか、誰にもわからないわ。愛している人にはそれを伝えるべきよ。感謝していると言うべきなのよ。相手がこの率直な言葉を受け止めてくれなくても、期待とは違う反応をしてもかまわない。伝えたことが大事なんだから」
(同前)
これはこの世を去る者だけでなく、後に残る者にとっても大事なことだ。とジュードは言った。去っていく者は自分の思いをすべて伝えてから逝くべきなのだ。そうすれば穏やかな気持ちになれる、と。その行動を通じて、残される者も自分の気持ちを正直に表現する勇気を身につけられたら、彼らは自分の死のときに、こういう後悔をしないで済む。それに愛する人に自分の気持ちを伝えられないうちに相手に死なれてしまったという罪悪感を抱えて生きなくて済むようになる。
運動ニューロン疾患という難病を患ったジュードは、裕福な家庭に生まれました。
両親は支配欲が強く、親の期待通りの人生を送るように、強いプレッシャーをかけられていたと言います。
夫との結婚を認めてもらえなかったジュードは駆け落ちして、実家から追放されます。
その後、父親とは和解できたものの、母親との確執は残ったままです。
余命僅かとなったジュードは勇気を出して、長年確執のあった母親に自分の気持ちを伝えて和解しました。
勇気を出して母親に気持ちを伝えたことで「死ぬ前に自分の想いを伝えればよかった」という後悔を無くすことができたのです。
後悔④友人と連絡を取り続ければよかった─孤独な老後を迎えたドリス
「一番さみしいのはお友達に会えてないことね。もう亡くなった人もいる。私と同じような状況の人もいるわ。連絡が取れなくなってしまった人もいるし。ずっと連絡を取っていればよかったのよね。友達はいつもそこにいてくれるとみな思っているでしょう。けれど時が流れると、いつの間にか、周りには自分をわかってくれる人も、自分のこれまでの人生を知っている人もいなくなっているのよ」
(同前)
ドリスは療養施設に住む高齢の女性です。
一人娘は日本に住んで、連絡は取っているものの、それほど親しい仲ではありません。
「娘には娘の生活があるから仕方ない」と割り切っています。
ドリスは孤独のまま死んでいくことに、恐怖を覚えました。
ブロニーはインターネットを使って、疎遠となっていたドリスの友人と連絡を取ります。
3人のうち2人は他界していましたが、1人だけ連絡が取れて電話越しに再会を果たします。
ドリスは死ぬ間際に親友を再会して、幸せな最期を迎えることができました。
後悔⑤幸せをあきらめなければよかった─人生の最期に幸せになれたローズマリー
「私、もっと幸せに過ごせばよかった。なんてみじめな人生だったのかしら。幸せになる資格なんて、私にはないと思っていたのよ。けれどそんなことはない。それがわかったの。今朝、あなたと一緒に笑っていたら、幸せを感じても罪悪感を持つ必要なんてなかったんだってわかったの」
(同前)
ローズマリーは80歳を過ぎて、余命宣告を受けた患者です。
若くして結婚しましたが、夫から暴力を振るわれるなど虐待を受けて離婚します。
しかし、自分の実家が名家だったため、離婚によって家の評判を落とさないようにローズマリーは街から離れることになりました。
生活に追われたローズマリーは心を閉ざし、幸せになることを諦めていました。
「幸せになりたいけど、どうしたらいいのかわからない」という質問に対して、ブロニーは
「幸せになってもいいと思うことです。自分を許して、積極的に幸せになってください」
と答えます。
その助言を聞いたローズマリーは、少しずつ「自分は幸せになってもいい」と思えるようになっていきました。
ローズマリーは「自分は幸せになる資格はない」という考えを払拭して、最期の数か月間を幸せに過ごすことができました。
感想
2026年は、日本各地で自然災害が相次ぎました。
熊本地震や日本各地の大雨被害など。
いつ人生最後の日がくるか分かりません。
「あと何十年も生きられる」と考えて、死を直視せずに生きていると、死ぬ瞬間になって後悔するでしょう。
著者によると、余命宣告を受けた患者で、
「もっとお金を稼ぎたかった」
「もっと物がほしかった」
と、言う人はいなかったそうです。
一番多かったのが「自分に正直な人生を生きればよかった」。
これは気付いたときにはどうにもならないので、自分に嘘をつかず正直な人生を生きたいと思っています。
本書を読んであらためて「死ぬ瞬間に後悔しない人生を送ろう」と、自分の死と向き合う重要性を学びました。


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