島田裕巳さんの『プア充─高収入は、要らない─』を読みました。

【読書日記】『プア充―高収入は、要らない―』島田裕巳
本の概要(どんな本?)
「ワーキングプア」と「リア充」を合わせた「プア充」の生き方・思想について書かれた本。
経済成長が止まった日本において、これから劇的に景気が良くなることはない。
たくさんお金を稼ぐためには、長時間労働・休日出勤といった、身も心もすり減らして働く必要がある。
しかし、過剰なほど働いても、その労働に見合った豊かさ・幸せを得ることはできない。
これからの時代は「頑張って働いて、たくさん稼ぐ」ではなく「ほどほどに働いて、必要な分だけ稼ぐ」ほうが、ゆとりを持って生きられる。
幸せに生きるために、高収入は必要ない。
「少欲知足」の精神をもって「足るを知る」ことが大事である。
仕事に人生を奪われず、低年収でも豊かに生きるコツを学べる1冊。
学びになった点
年収300万円くらいが最も幸せに暮らせる
実は現代の日本は、年収300万円くらいが最も幸せに暮らしていける社会だ。
きっと、「そんなに少ないお金で、楽しい生活をおくれるはずがない」と思ったことだろう。だけど、この本を読めば、そんな「思い込み」は絶対に変わる。
考えれば考えるほど、年収300万円くらいのプア充こそ、これからの日本の生き方にとても合っているライフスタイルだから。
幸福な生活に、「高収入」も「刺激」も「贅沢」も「無理」も「成長」も、必要ない。
必要なのは、プア充になって、ムダなく合理的に生きることなんだ。
本書では年収300万円を推奨しています。
高年収を求めると、高いレベルの仕事や長時間労働を求められます。
年収300万円ぐらいなら、そこまで忙しい仕事や長時間労働もありません。
そのため、あくせく働く必要は無くなり、時間にゆとりを持って暮らせます。
特に難しい資格もいらず、年収300万円を条件にすれば多くの仕事が当てはまるので、探しやすいでしょう。
会社の成長使命に振り回されない
「会社というのは、株主に利益をもたらすためにあるものだから、株式会社である限りは、成長という使命からは永遠に逃れられないだろう。大きな会社であればあるほど資本も大きいわけだから、プレッシャーも大きいだろうね。みんな、そのプレッシャーにずいぶんと振り回されているわけだ」
(中略)「だけど、その会社の成長使命に、君たち個人が振り回される必要はないんだ。『成長しなければいけない』『稼がないといけない』、現代社会が作り出した幻想に、みんな不安をあおられているだけなんだよ」
株主の利益や社員の給料を払うため、会社は成長を目指す必要があります。
その「成長しないといけない」というプレッシャーは、大企業ほど大きくなります。
しかし、そのプレッシャーに個人が振り回される必要はありません。
「成長しないといけない」「たくさん稼がないといけない」
これらは、社会が生み出した幻想に過ぎません。
私たちは、この幻想によって「○○しないと…」と不安を感じています。
ですが、会社と個人は別です。
無理して成長する必要もなければ、忙しく働いてたくさん稼ぐ必要はありません。
社会が生み出したプレッシャーに振り回されないことが大事です。
稼げば稼ぐほど、お金に対する執着や欲望は増える
「そして、そんな得体のしれないプレッシャーにあおられて稼げば稼ぐほど、『もっと稼ぎたい』『もっと稼がなくては』という気持ちは際限なくわいてくる。年収3000万を超えたら次は350万、今度は400万、次は500万、600万…。もっともっと、稼ぎたくなる」
(中略)「ああ、稼いでも稼いでも、永遠に満足することはないだろう。いや、むしろ稼げば稼ぐほど、お金に対する執着や欲望、不安感は増すものなんだ」
稼げば稼ぐほど、お金がもっと欲しくなる。
人間の欲望には、キリがありません。
お金がまったくないと、生活に困ってしまいます。
しかし、お金がありすぎても「もっと欲しい」と執着や欲望が増します。
「贅沢はできないけど、とりあえず食べていく分のお金はある」
過不足のない、衣食住が揃っているぐらいがベストではないでしょうか。
お金を稼ごうとすると、ストレスで無駄な支出が増える
「それにな、お金を稼ぐためには当然ながら時間や労力を対価として失うわけだから、そこを補うための無駄な支出が増えるんだよ」
(中略)「みんな、仕事が忙しすぎて外食やらコンビニ弁当ばかり食べているんじゃないのか?ストレス発散のためにたいしてほしくもないもの、買ったりしてないか?」
仕事のストレスで、無駄な支出をする。
私も身に覚えがあります。
会社員時代、仕事のストレスを発散するために、浪費を繰り返していました。
一番大きな浪費は、車です。
20代のときは、4000ccもあるランドクルーザーに乗っていました。
お金を稼ぐために働き、ストレスを溜めて、無駄な支出をする。
- お金を稼ぐために働く
- 仕事のストレスが溜まる
- ストレスを発散するために浪費する
- 浪費してお金が無くなる
- お金を稼ぐために働く(以下繰り返し)
この無限ループに陥っていました。
隠居した今は、仕事のストレスが無いため、無駄な支出は無くなりました。
企業が作りあげた幻想に惑わされない
「ある程度稼ぐようになると、やれ夢のマイホームだのマイカーだのマンションだの、周りから色んな誘惑がある」
(中略)「そうだろう。お金を持っている人に、いかにお金を使わせるかということを企業は毎日考えているんだから。あれは現実的な誘惑なんかじゃない、幻想だよ。みんなが憧れるような非現実的な世界を演出して作り上げた、企業が消費者にお金を使わせるための幻想なんだ」
企業のマーケティング部門は、消費者にお金を使ってもらうように、色んなやり方で誘惑してきます。
有名人を起用したCMを流す、購買意欲を刺激するキャッチコピーを作る、など。
経済評論家の故・山崎元さんは「マーケティングとは、ぼったくりのテクニック集だ」と言いました。
企業が作った幻想に惑わされると、マイカーやマイホームなど、無駄な浪費をしてしまうでしょう。
会社は自分を守ってくれない
なにもかもがばからしくなった。
一生懸命頑張ってきたのは、いったい何だったんだろう。
頑張ったあげく、自分のスケジュールさえ把握できず、顧客と会社に迷惑をかけてしまった。そのことはたしかに申し訳ないが、会社がまったく僕をかばってくれなかったことにもショックを受けた。
社員を駒としか思っていないんだな。
そう思うと、途端にむなしくなった。心のどこかでは分かっていたはずだった。こんな体質の会社が、社員のことを考えてくれるわけがない。
会社はあくまでも利益を出すための組織であって、社員1人1人を守るためにあるわけではありません。
私は会社員時代、だれにも文句を言わず、一生懸命働きました。
間違いなく、人生で一番頑張った時期だと思います。
しかし、その頑張りが報われる日は来ませんでした。
仕事で鬱病になったとき「鬱病になるのはお前が悪い。体調管理がなってない証拠だ」と上司から一喝されました。
どれだけ頑張って働いても、会社は私たちを守ってくれません。
あくまでも会社は「生活費を稼ぐための場所」ぐらいで考えておくのが良いと思います。
お金を持つことの危険性
「政治家や事業家が、お金にまつわる犯罪で身を滅ぼす事件は、しょっちゅう報道されているだろう?一度生活レベルを上げてしまうと、元に戻れなくなって、もっともっとお金が欲しくなるんだ」
(中略)「お金を持つことの危険性はもっとあるぞ」
先生がニヤリと笑っていった。
「お金目当てに人が寄ってくるんだ。そのときに本人は気づかないが、お金目当てで寄ってきた人は、その人のお金がなくなった瞬間、蜘蛛の子を散らすようにいなくなる」
お金を持つことによる、2つの危険性をあげています。
1つは、お金を持つことで執着や欲望を持ってしまうこと。
お金は持てば持つほど「もっと欲しい」と欲望が膨らんで、悪いことに手を染めてしまう人もいます。
2つめは、お金目当てに人が寄ってくること。
お金を持つと、あやしい儲け話を持ってくる人、お世辞を言って仲良くなろうとする人が寄ってきます。
いずれにせよ、あまり良い結果にはなりません。
お金を持ちすぎると、こういった危険を持つことになります。
賃貸と持ち家、どちらがいいか
「うん。住宅ローンを組むと、金利にもよるけど借入額の1.5倍近く払うこともあるんだって。それに、賃貸だったらメンテナンスは大家さんがしてくれるけど、持ち家だと十何年かごとに自分でリフォームしなきゃいけなくなるから、そういうお金もすごくかかるみたいよ。しかも、賃貸なら引っ越すことも簡単にできるけど、家を買ってしまうと、家族構成や勤め先が変わっても、そう簡単には引っ越しできないからね」
「賃貸と持ち家、どちらがいいのか」
ここでは、賃貸をおすすめしています。
- 住宅ローンの金利がない
- メンテナンスの手間が省ける
- 引っ越しがしやすい
など。
賃貸にはこういったメリットがあります。
お金や手間を考えるなら、賃貸のほうが良いようです。
「賃貸と持ち家、どちらがいいのか?」悩んだときは、両学長の『お金の大学』が参考になります。
プア充におすすめなのは「古くてださい会社」
「西野は経験者だからよく分かっていると思うが、ベンチャー企業というのはどうしたって安定していない。倒産する可能性も高いし、経営者の気分に振り回されることもあるだろう。プア充を目指すなら、ベンチャーではなく、ある程度安定した会社がいいだろう」
(中略)「いや、有名でなくていいんだ。有名な大手企業は安定はしているが、仕事は忙しいからな。プア充生活におすすめなのは『古くてださい会社』だ」
プア充におすすめなのは「古くてださい会社」です。
地域に根付いた「古くてださい会社」は、高年収は望めないものの、経営が安定しています。
そのため、ほどほどに働いて年収300万円ぐらいを目指す、プア充生活に向いているのです。
一方、ベンチャー企業や大手企業は、プア充生活には不向きだと言えます。
どちらも高年収が望めますが、ベンチャー企業は倒産しやすいし、大手企業は仕事が忙しいからです。
主人公の西野は、勤めていたベンチャー企業が倒産して、小さな会社に再就職します。
年収450万円→350万円に下がりますが、忙しい仕事から解放されて、ゆとりを持って生きられるようになりました。
会社に使い捨てられないようにする
「今は、何事も使い捨て社会だから…社員の生活のことを本気で考えてくれる会社は少ないものよ。お金のため、会社のために精一杯働いて体を壊しても、会社はあなたのために何もしてはくれない」
(中略)「生きていく上で『使い捨てられない』ことが大切よ。そのためには自分の時間をいかに確保し、健全な生活をしていくかを自分の頭で考えなければいけない。…だったわよね、あなた?」
生きていく上で大切なのは「会社に使い捨てられないこと」。
会社のために一生懸命働いて体を壊しても、会社は何もしてくれません。
働けなくなった時点で、使い捨てられてしまいます。
使い捨てられないためには、時間を確保して、自分の頭で考えて行動しなければなりません。
楽しみは「禁欲」から生まれる
「世界の宗教の半分は禁欲を基本としている。禁欲しているからこそ、たまに行われるハレの日の行事が、楽しいんだよ。禁欲からの解放だな」
(中略)「『待つ』ことは、人間にとって実は意外と大事なことなんだよ。お祭りだって、毎日あったら特別でもなんでもないだろう?」
禁欲するからこそ、楽しみが生まれます。
我慢した分、楽しみがより大きくなるからです。
毎日お祭りをやっていたら、だれも飽きてしまい、楽しめなくなります。
精神科医の樺沢紫苑さんは「ドーパミン的幸福を高めるコツは、制限することだ」と主張しました。
普段は禁欲して、たまにやるからこそ、ハレの日の行事は楽しいのです。
健康が一番の資本
「たくさん稼ぐ必要はないが、自分の生活に必要なお金は、きちんと安定して稼ぎ続けなければいけないんだ。そのためにも、健康な体が資本だ。だから、仕事で体を壊すなんてのは、本末転倒ということだな」
健康が一番の資本です。
仕事はあくまでも、生活するための手段に過ぎません。
「仕事>健康」になってしまうと、一番大事な資本を失ってしまいます。
働きすぎて身体を壊したり、鬱病になったり、など。
仕事で健康を失うのは、本末転倒です。
「仕事<健康」を心がけて、仕事に人生を奪わないようにしましょう。
プア充の3つのポイント
「限られた資金の中で、自前で楽しむという姿勢が大事なんだ。東洋の思想に『少欲知足』という言葉があるが、まさにそれが理想だ」
(中略)「欲を持ちすぎず、現在の状態に満足する。ある程度の制限があったほうが人生は楽しい。限界があるからこそ、お金を使わずになんとか自前でやるという方向にシフトしていくんだ。お金のかからないプア充の暮らしをするためには3つのポイントがある。『外食をしない』『規則正しい生活をする』『ストレスをためない』だ」
プア充生活には、3つのポイントがあります。
- 外食しない
- 規則正しい生活をする
- ストレスをためない
自炊すれば、外食より安く済みます。
また、規則正しい生活を送ることで、心身の健康が保たれ幸福度は高くなります。
ストレスを溜めなければ、身体を壊したり、ストレス発散のために浪費したりことはありません。
不安を自ら作り出して苦しむ現代人
「死に対する考え方が、昔と今とでは根本的に違うんだよ。昔は生まれてすぐに死ぬことも多かったし、出産で命を落とすことや、結核などの流行り病で死ぬこともよくあった。今のように長生きが前提の時代と違って、いつ死ぬかがまったく分からなかったんだ」
(中略)「今の生活が豊かすぎて余裕があるために、不安を自ら想像して苦しんでしまっているのが現代人だ。まったく皮肉なものだな。生活がカツカツな方が、『今』を一生懸命生きられるだろう」
昔と違って、現代は長生きを前提として生きるようになりました。
そのため、現代人は老後の不安に怯えて、若い頃から将来に向けて蓄えておかないといけない、窮屈な人生を強いられています。
何十年も先のことを考えても、どうなるか分からないし、不安になるだけです。
大事なのは、先のことを心配して生きるのではなく「今」に集中して生きること。
「今」に集中して生きることが、幸福に繋がります。
感想
「ほどほどに働いて、ほどほどに稼ぐ」
プア充の生き方は「ワークライフバランス」が取れた生き方だと思います。
プア充に近い生き方をしているのが、ドイツ人です。
たとえば『ドイツ人はなぜ、年290万でも生活が「豊か」なのか』では、贅沢をせず質素に暮らし、仕事よりプライベートを重視するドイツ人の生き方が書かれています。
ワークライフバランスの取れた働き方を実践して、ドイツは日本を抜いてGDP世界3位になりました。
働きすぎて余裕がない日本人には、プア充やドイツ人の働き方・ライフスタイルが参考になると思います。
「仕事よりプライベートを大事にしたい人」
「いまの日本人の働き方に疑問を感じている人」
そんな人に、ぜひ読んでもらいたい1冊です。


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