高坂勝さんの『減速して自由に生きる─ダウンシフターズ』を読みました。

高坂勝『減速して自由に生きる─ダウンシフターズ』
どんな本?(本の概要)
忙しい生活をやめて生活をダウンシフトした著者の生き方、考え方が書かれた本。
前半では、サラリーマンだった高坂さんが仕事を辞めて、ダウンシフターになるまでの道のり。
後半では、ダウンシフターとなった高坂さんの生き方、思想が書かれている。
競争社会・消費主義から抜け出し、お金・仕事・時間に追われず生きる、ダウンシフターの生き方が学べる1冊。
学びになった点
減速生活者(ダウンシフター)
『浪費するアメリカ人』(2000年、岩波書店刊、森岡孝二訳)の中で、米国人経済学者ジュリエット・B・ショアは、1990年代後半の米国で、次のような人たちを「減速生活者(ダウンシフター)」と呼んだ。
「過度な消費主義から抜け出し、もっと余暇を持ち、スケジュールのバランスをとり、もっとゆっくりしたペースで生活し、子どもともっと多くの時間を過ごし、もっと意義のある仕事をし、彼らのもっとも深い価値観にまさに合った日々を過ごすことを選んでいる」(同書から抜粋)。
その多くは転職を経験して減収になり、素敵なレストランへ行ったり、ブランド品を買ったりする回数も減った。それでも減速生活者には価値あるギアチェンジだったという。
ダウンシフターとは「過度な消費主義から抜け出し、仕事とプライベートのバランスをとり、時間にゆとりを持って暮らす人」のこと。
ダウンシフターの多くは転職を経験して、以前より収入は減ったが、働く時間も減って余裕を持って生活しています。
著者の高坂さんは20代のとき、年手600万円ほどの大手小売業のサラリーマンでした。
ダウンシフターになってBarのマスターになってからは、年収は350万円に減収。
忙しい仕事から解放され、自由な時間が増えたことで、生活にゆとりを持って暮らしています。
私の場合、20代のとき介護の仕事をしていて、年収は300万円ぐらいでした。
いまは隠居人というダウンシフターになったことで、年収は40~50万円。
大幅な減収ですが、私の生活費は1カ月3万円ほどなので問題ありません。
生活をダウンシフトすることでほとんど働く必要が無くなり、自由に生きています。
モノでは幸せになれない
こんなにモノを持っていても、購入する前と後の興奮時以外には、満足を得られたことがありませんでした。
それどころか、ますますモノが欲しくなります。もっと高機能のモノが欲しくなります。なぜか、遊びに行くことは、イコール買い物すること。すでにあるモノたちを使うための時間を惜しんで、更に買い物をしているのです。
(中略)そのモノたちを買うにはお金がいります。お金を得るには働かねばなりません。モノが増えるほど支出も増えるため、収入を上げるべく働く時間も増える、一方、一日は24時間と決まっています。
一日の中で働く時間が増えれば増えるほど、買い揃えたモノたちを使う時間はますます減ってゆきます。
高坂さんは「モノでは幸せになれない」と言います。
なぜなら、モノによる幸福感は長続きしないからです。
高坂さんは車以外に、バイク、自転車。
趣味の楽器は、太鼓、キーボード、ギターを3本も持っていました。
どれだけモノを買っても、買う前と買った直後以外、満足感は得られなかったそうです。
私も同じ経験をしたことがあります。
私は20代のころ、車は4000ccもあるランドクルーザーに乗り、そのうえ中型バイクも持っていました。
車やバイクを買った直後は、大きな満足感を得ました。
しかし、その満足感は1年も経つ頃には、すっかり消えていました。
モノを得ることによる幸福感は「ドーパミン」によるものです。
ドーパミンによる幸福は、強烈な幸福感を味わえる一方で、長続きしません。
また、モノを買うためには、お金がいります。
お金を得るためには働かなければなりません。
「モノを買う→お金が無くなる→お金を稼ぐために働く→働いたお金でモノを買う→お金が無くなる…」この無限ループになります。
稼がない自由
たまTSUKIが持続可能なのは、ビジネススタイルとライフスタイルを融合させているからです。
巨大市場システムから片足を抜いた私は、生活実費が少なくなった分だけ収入を減らしても大丈夫。
といっても、石器時代の生活をしているわけでも、江戸時代の生活をしているわけでもありません。限りない欲に、サヨナラしただけです。そのほうが幸せだからです。
しっかり稼ぐのも自由ですが、ある程度で満足して、それ以上は稼がないという自由もあるのです。
会社員からダウンシフトした高坂さんは「ヒマな店」を目指して、6坪ほどの小さなBar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」をオープンします。
- 飲食業では異例の週休2日
- ランチ営業はせず夜のみ営業
- 1日の来客目標数はたったの5人
このように、時間に余裕を持って経営しています。
小さな店だから家賃が安く、1人で経営しているため人件費はかかりません。
経営するための維持コストが少ないため、そんなに店が繁盛しなくても、問題なく続けられるのです。
自分のペースで無理なく働いて、最低限の生活費を稼ぐことについて「しっかり稼ぐのも自由だが、稼がない自由もある」と言っています。
私が今やっている仕事も同じです。
ブログ、YouTube、本の執筆。どれも経費はほとんどかかりません。
私は1カ月3万円稼げれば生活できるので、忙しく働く必要はないです。
そのため、自分のペースで無理なく続けられています。
ミニマム主義
スモールメリットを活かした考え方、暮らし方、経営のあり方を「ミニマム主義」と言います。ミニマムとは「最小」「最小限」という意味です。この言葉は、「日本一小さい農家」を自称する通称・源さんこと西田栄喜さんの造語です。
(中略)何のためにどのくらいもうけるのか。ミニマム主義ではその「何」は「幸せ」です。幸せに暮らすにはどのくらいの収入があればよいのか、そのためにはどのくらいの売り上げが必要なのか。そうやって考えていくとやる事がどんどん明確になっていきます。
お金はあればあるだけいい。スピードは速ければ速い方がいい。小さいより大きい方がいい。なんてしていたらキリがありません。
幸せの原点は「比べない」「足るを知る」です。ミニマム主義ではお金と向き合うけど、キリがない欲望には付き合わないのが前提です。
ミニマム主義とは「自分が幸せに暮らすためには、どのくらい収入があればいいのか?」という考えをベースにして、必要最低限だけ働く生き方・思想。
ミニマム主義の特徴は「比べない」「足るを知る」こと。
お金とは向き合うけど、キリがない欲望には付き合わないと言います。
私もミニマム主義の提唱者である、西田さんと同じ意見です。
最低限の生活費「ミニマム・ライフコスト」を考えて、そこから逆算して働く量を決める。
私のミニマム・ライフコストは1カ月3万円なので、それだけブログ・YouTube・本の売上で稼げばいい。
「他者と比べない」「キリがない欲望には付き合わず、足るを知る」ことで、幸せに生きています。
半農半X
京都府綾部にお住いの塩見直紀さんは、「半農半X」という言葉を作りました。「半農半X」のエックスには、「自分の天命なる仕事」を当てはめてほしいという想いが込められています。今の私の場合なら「半農半〝吞み屋のオヤジ〟」でしょうか。執筆が好きなら「半農半著」。絵が好きなら「半農半画」。歌い手さんなら「半農半歌手」、NPOで働くなら「半農半NPO」。仕事に応じて様々な造語が可能でしょう。半農半Xの〝X〟に好きなことを入れて、それを仕事にする。米や野菜や大豆を自給しているなら低収入でいいのですから、もう雇われる仕事を選択しなくてもいいでしょう。
半農半Xとは、農業で食料を半自給しながら、自分の好きな仕事「X」で生活費を稼ぐ生き方。
高坂さんは、Barが休みの日は田んぼに行って、米や大豆を自給しているそうです。
そんな自分を「半農半〝吞み屋のオヤジ〟」と自称しています。
- 執筆が好きな人なら「半農半著」
- 絵が好きなら「半農半画」
- 歌い手なら「半農半歌手」
など。
農業で食料を自給すれば、食費はかからなくなります。
食費がかからなければ、生活コストは少なくなるので、たくさんお金を稼ぐ必要はありません。
その結果、お金を気にせず自分が好きな仕事「X」に打ち込めるのです。
私は半農半Xの生き方に注目していて、社会に適応できない人でも、半農半Xの生き方は1つの選択肢になると考えています。
感想
この本を初めて読んだのは、5年以上前です。
改めて読んでも、高坂さんの生き方・思想から学ぶことはたくさんあります。
私が特に共感できたのは、高坂さんが仕事を辞めて旅をしているときに、新しく生まれた考えです。
もう頑張らなくていい。
もう無理しなくていい。
もう嫌なことをしなくていい。
もう親の期待に応えなくていい。
もう雇われなくていい。
もう評価されなくていい。
もう急がなくていい。
もう大きくならなくていい。
もう儲けなくていい、もう効率化しなくていい。もう経済成長しなくていい。
そして、たくさん悩んだっていい。悩みを楽しめばいい。
今まで常識と考えて来たことを逆説的にとらえればいいんだ。
そんな単純明快な答えが、身体の中に突然舞い降りてきたのです。
なぜ、開聞岳を下山したときに、そんな想いが降りてきたのか未だにわかりません。
何の根拠もなく舞い降りてきた感覚でした。
鹿児島にある開聞岳を下山したときに、突然このような考えが降って来たそうです。
高坂さんは仕事のプレッシャーで鬱状態になり、30歳で退職して旅に出ました。
私も仕事のストレスで鬱病になり、28歳で退職してバイクで日本一周の旅に出ました。
私と高坂さんは共通点が多いからこそ、共感できるところも多かったです。
お金・仕事・時間に追われて、生きづらさを感じている人には「減速して自由に生きる」ダウンシフターの思想が必要だと考えています。
ダウンシフターという言葉を生んだ、アメリカ人経済学者ジュリエット・B・ショアの『浪費するアメリカ人』。
半農半Xの提唱者、塩見直紀さんの『半農半Xという生き方』も併せて読むと、本書の理解がより深まると思います。


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