世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉
著者紹介
佐藤美由紀
フリーライター。
人物ルポや社会レポートなど様々なジャンルの記事を執筆。
ホセ・ムヒカ大統領(当時)の生き様や哲学に強く興味を覚え、独自に調べるうちに本書の執筆を思い立つ。
ホセ・ムヒカ元大統領
第40代ウルグアイ元大統領。(2010年~2015年)
2012年にリオデジャネイロで開催された、国連会議でのスピーチで一躍有名となる。
愛車は1987年製のフォルクスワーゲン・ビートル。
国民と同じ生活を送るため大統領官邸に住むことを拒み、妻が所有する小さな農場で暮らす。
大統領在任中は、給料の90%を慈善事業と所属する政党に寄付していた。
その大統領らしからぬ質素な暮らしから、「世界でもっとも貧しい大統領」と呼ばれている。
本の概要
ホセムヒカ氏の「お金・自由・幸福」にまつわる、人生哲学を学ぶことができる本。
貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人のことである。
モノは私たちに自由をもたらさない、それどころか自由を奪っていく。
だからこそ、質素な生活を心がけて自由を手に入れなければいけない。
我々は発展するために生きるのではなく、幸せになるために生きるべきである。
消費主義社会から脱出して、本当の幸せを掴み取るための一冊。
こんな人におすすめ
学びになった点
貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。
ホセ・ムヒカ氏は自身の生活を「貧乏ではなく質素」だと言います。
貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人のことです。
少ししかモノやお金が無くても、今の生活に満足することができれば貧乏ではありません。
逆にどれだけ多くのモノやお金を手に入れても、満足できなければ貧乏と言えるでしょう。
今の生活に満足して暮らす「足るを知る」ことが大事です。
私はモノもお金も少ししか持っていませんが、今の生活に満足しています。
物質的ではなく、精神的な豊かさを獲得できたからです。
物であふれることが自由なのではなく、時間であふれることこそ自由なのです。
本当の自由とは物を多く持つことではなく、自由な時間を多く持つことです。
多くのモノを持つと、維持や管理に時間をとられて時間を失います。
物質的な欲求を満たすために働く時間は、自由ではありません。
質素な生活を送ることで労働を減らし、自由な時間を確保する。
自由な時間を自分の好きなことに使えるのが、本当の自由なのです。
どれだけモノを手に入れても、自由をもたらしてはくれません。
働く時間を減らして時間を得ることが、本当の自由につながります。
人がものを買うときは、お金で買ってはいない。そのお金を貯めるために割いた人生の時間で買っているのです。
私たちはモノを買うときにお金を使っていますが、実際は時間で買っています。
なぜなら、使った分のお金を稼ぐために働いた時間と引き換えにしているからです。
時給1000円のアルバイトをしていて1万円のモノを買ったら、10時間分の労働と交換していることになります。
10万円なら100時間、100万円なら1000時間…と、金額が増えるごとに自由な時間を失うのです。
モノを買うときはお金ではなく、時間で買っているという認識を持つと、無駄なモノを買うことは無くなります。
モノを買えば買うほど、その分働く時間が増えて自由な時間が無くなります。
質素は〝自由のための闘い〟です。
質素な生活を心がければ、自由な時間を手に入れることができます。
生活費が少なければ少ないほど、働く時間を減らすことができるからです。
たとえば、私は月5万円以下で生活しているためほとんど労働をせずに済んでいます。
逆に贅沢な暮らしをすると、働く時間が増えてしまい自由を拘束されます。
仕事が好きか嫌いかは別問題で、その働いていない時間こそ自由を指すのです。
自由な時間を確保するためには、質素な生活を心がけましょう。
自由になるためには、質素な暮らしが鍵となってきます。
私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。
私たちが生きる目的は「幸せになること」であり、決して科学や文明を発展させることではありません。
科学や文明の発展は幸せになるための一つの手段でしかなく、目的ではないのです。
しかし、現代においては手段と目的が入れ替わり、発展ばかり重視して個人の幸福が疎かになっているように感じます。
特に今の日本は、発展した生活水準を維持するために、過剰な労働やサービスを強いられています。
高水準な生活を維持する弊害として、うつ病や過労死が社会問題となっているのです。
「人類の幸福のために発展する」のではなく、「発展するために人類がいる」かのように思えてなりません。
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「人生の目的は幸福である」と言いました。
我々人類はテクノロジーの発展ではなく、幸福について真剣に考えるべきです。
今の日本は「即日配送」「24時間営業」といった「便利」を追求しすぎて、長時間労働など過酷な労働環境を強いられています。
生活水準を維持するために人間が不幸になっては、本末転倒です。
この本を読んで変わったこと
お金に対する認識が変わった
本書を読んでから、お金に対する認識が変わりました。
お金の正体は、そのお金を稼ぐため引き換えにした「時間」です。
「モノを買う時はお金ではなく、時間で買っている」は格言だと思います。
つまり、余計なお金を使わなければ、自由な時間を増やすことができるのです。
私はモノを買うときに「これを買ったら、どれだけの時間を失うだろうか?」と考えて、無駄な買い物をしないよう心掛けています。
「モノを買うときはお金ではなく、時間で買っている」。
このことを念頭に置けば、無駄遣いをなくすことが出来るでしょう。
質素な生活を大事にするようになった
私は普段から質素な生活をしていますが、今の生活をより大事にするようになりました。
生活コストを抑えて質素に暮らすことが、自由を手に入れるために最適な手段だからです。
世の中の多くの人は、あらゆる欲求を満たすために、自分の時間を労働で消費しています。
物欲、金銭欲、承認欲求におぼれた生活では、本当の自由を手に入れることはできません。
小さい家・少しのモノやお金で満足して暮らせば、それらを守る時間も少しで済みます。
「足るを知る」ことが、本当の自由につながるのです。
ミニマムライフコスト(生活するのに必要最低限のお金)を少なくすれば、労働時間が減って自由な時間を手に入れることができます。
自由であるために、モノより時間を優先するようになった
私は自由でいるために、モノより時間を優先しています。
モノが多いことよりも、自由な時間が多いことが幸福につながるからです。
ムヒカ氏のスピーチの中で、6時間労働を獲得したにもかかわらず、車やバイクのローンに追われて以前よりも働いている人がいるといいます。
私たちはいまの消費主義社会に、もっとも大事な人生の時間を奪われていることに気付くべきです。
心理学者のティム・キャサーは「時間の豊かさが幸福に直結して、物質の豊かさはそうではない」と主張しました。
モノは自由をもたらさず、時間が自由をもたらしてくれるのです。
物であふれることが自由なのではなく、時間であふれることが本当の自由です。
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