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【書評】『ソクラテスの弁明』プラトン。死に対する恐怖を克服するためには

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  1. 『ソクラテスの弁明』 プラトン
    1. 著者紹介
    2. 本の概要
    3. こんな人におすすめ
    4. 学びになった点
      1. 私はこの人間よりは知恵がある。(中略)この人は知らないのに知っていると思っているのに対して、私のほうは、知らないので、ちょうどそのとおり、知らないと思っているのだから。
      2. 徳について、(中略)毎日議論をすること、これはまさに人間にとって最大の善きことなのです。そして、吟味のない生は人間にとって生きるに値しないものです
      3. 死を恐れるということは、皆さん、知恵がないのにあると思いこむことに他ならないからです。それは、知らないことについて知っていると思うことなのですから。(中略)あの恥ずべき無知、つまり、知らないものを知っていると思っている状態でなくて、何でしょう。
      4. 死んでいる状態は、次の二つのどちらかなのです。無のような状態で、死んでいる者はなんについても何一つ感覚ももっていないか、あるいは、言い伝えにあるように、魂がこの場所から別の場所へ向かう移動や移住であるか、このどちらかなのです。
    5. この本を読んで変わったこと
      1. 死に対する恐怖が軽くなった
      2. 「善く生きるとは何か?」考えるようになった
      3. 「知ってると思い込む」ことに気をつけるようになった
  2. まとめ

『ソクラテスの弁明』 プラトン

著者紹介

ソクラテスの弟子にあたる、古代ギリシャ哲学者「プラトン」。

アカデメイアという学園の創設者であり、天文学、生物学、政治学、数学、哲学などを教える。

プラトン哲学を代表する「イデア論」では、私たち人間に見えているものはすべて不完全なものであり、「イデア界」に真の存在があると考えた。

本書以外にも、『国家』『饗宴』など多くの著書が現代にも残っている。

本の概要

被告人として法廷に立ち無実を証明するため弁明するシーンを、弟子であるプラトンが書き残したもの。

「哲学の祖」と呼ばれるソクラテスは、アテナイの住人から「若者を堕落させた」容疑を受けて裁判にかけられる。

告発者に対して対話を交わす中で、「恥ずべき無知とは?」「善く生きるとは?」が明らかになっていく。

なぜソクラテスは死刑の判決を受けても、自身の発言を覆すことなく哲学しつづけたのか?

人としての倫理や、死生観を学びたい人には必読の一冊。

こんな人におすすめ

この本は、こんな人におすすめです。
  • 自分の死生観を鍛えたい人
  • 徳や倫理について学びたい人
  • 古代ギリシャ哲学の思想に触れたい人

学びになった点

私はこの人間よりは知恵がある。(中略)この人は知らないのに知っていると思っているのに対して、私のほうは、知らないので、ちょうどそのとおり、知らないと思っているのだから。

「よく知らないことに対して知っていると思い込むより、知らないことは知らないと思っているほうが知恵がある」。

ソクラテス哲学で有名な「無知の知」と呼ばれるものです。

私たちは自分がよく知らないことに対して、あたかも知っているように思い込んでしまうことがあります。

本当の意味で「知る」とは明確な根拠をもって真理を理解し、その内容を説明できなければなりません。

たとえば、3:4:5の比をなす三角形が直角三角形であることは、学校で習ったので「知っている」と思いがちです。

しかし、自分で「3平方の定理」を使って証明できなければ、本当の意味で知っていることにはならないのです。

「知らないのに知っている」と思い込んでしまうとそれ以上の探求はやめてしまい、成長が止まってしまいます。

ソクラテスのように「自分は知らない」という自覚を持つことで、「もっと良く知ろう」という認識が生まれ、人として成長することができるのです。

徳について、(中略)毎日議論をすること、これはまさに人間にとって最大の善きことなのです。そして、吟味のない生は人間にとって生きるに値しないものです

裁判の結果、ソクラテスは死刑になってしまいます。

しかし、適正な罰金を支払ったり裁判員の同情を誘うなど、死刑を逃れる術はありました。

死刑を逃れず受け入れた理由は、自分の哲学を辞めることがソクラテスにとって「善く生きる」ことにならなかったからです。

トロイア戦争の英雄アキレウスは「恥」をなによりも恐れて、自身の死の運命を知りながら死地へ赴きました。

たとえ死ぬことになろうが、最後まで戦場で戦い抜くことがアキレウスにとって「善く生きる」ことだったのです。

ソクラテスの場合、「死ぬまで哲学しつづけること」が「善く生きる」ことでした。

死刑から逃れるため発言を撤回したり、裁判員の同情を誘うような弁明は、自身の哲学に反する行為になります。

不正によって「魂」の在り方を損うより、自身の哲学を貫き通して「死」を受け入れたのです。

死を恐れるということは、皆さん、知恵がないのにあると思いこむことに他ならないからです。それは、知らないことについて知っていると思うことなのですから。(中略)あの恥ずべき無知、つまり、知らないものを知っていると思っている状態でなくて、何でしょう。

ソクラテスは死を恐れることに対して、「知らないことを知っていると思い込む」のと同じだと指摘します。

なぜなら、死はだれも経験したことがないからです。

しかし、みんな経験したことがない、よく知らないはずの死を恐れています。

もしかしたら死は善いことかもしれないし、悪いものかもしれない。

知らないはずの死を恐れるというのは「知らないことを知っていると思う状態」であり、もっとも恥ずべき無知なのです。

死んでいる状態は、次の二つのどちらかなのです。無のような状態で、死んでいる者はなんについても何一つ感覚ももっていないか、あるいは、言い伝えにあるように、魂がこの場所から別の場所へ向かう移動や移住であるか、このどちらかなのです。

ソクラテスは死に対して二つの予想をします。

  1. 何一つ感覚がない、無のような状態
  2. 魂がこの世からあの世にいくこと

1のケースだと、夢を見ないぐらい深い眠りについているのと同じであり、それほどよく眠れているなら得なものです。

2の魂があの世に行く場合、あの世で神話に出てくるような偉人と対話できるなら、いくら払ってでもやってみたい人がいるでしょう。

つまり、ソクラテスの考えではどちらに転んでも「死は善いもの」なのです。

この本を読んで変わったこと

死に対する恐怖が軽くなった

以前は死に対して漠然とした恐怖を持っていましたが、本書を読んでから死に対する恐怖が軽くなりました。

死はだれも経験したことがない、善いものか悪いものか分からないからです。

死に対する予想としては、「熟睡している状態が続くこと」か「魂があの世にいくこと」。

私は寝るのが好きなので、夢も見ないような深い眠りにつけているなら、とても気持ちがいいものとなります。

もし魂が存在して死後にあの世に行くとしたら、ソクラテスやアリストテレスのような偉人たちと話し合ってみたいです。

地獄みたいなとこに行く可能性もゼロではないですが、「熟睡 or あの世への旅立ち」の2択だとしたら、死は怖いものではありません。

これまで死に関する本をいくつか読んできましたが、ソクラテスの死生観が一番腑に落ちるものでした。

「善く生きるとは何か?」考えるようになった

自分にとって「善く生きるとは何だろう?」と、考えるようになりました。

人としての徳を失い魂の在り方を損なうことは、「死」よりずっと恐ろしいことだからです。

ソクラテスは自分の意志を曲げて死刑を免れるより、哲学と共に死ぬことを選びました。

私にとっての「善く生きる」とは、「不正を働いたり他者を陥れることなく、自分の信念に基づいて生きる」ことです。

たとえ自分の立場が不利になってもウソをついたり他者を犠牲にするなど、自分の信念に背く行為はしません。

もし判断に迷ったとき「これは私にとって、善く生きるために必要なのだろうか?」と、魂への配慮を怠らないようにします。

「知ってると思い込む」ことに気をつけるようになった

「知ってると思い込む」ことは、気をつけねばなりません。

物事の一面だけを見て判断してしまうと、本質を見失ってしまうからです。

作中でもあった通り、多くの人は死を客観的に見て悪いものだと決めてつけています。

しかし、経験したことがないことを本当の意味で知ることはできません。

経験もせずに「知ってると思い込む」と、大事な判断も見誤ってしまうでしょう。

ジョジョの奇妙な冒険に出てくる吉良吉影は、思い込むことは何よりも恐ろしいことだと言いました。

「思い込む」という事は何よりも「恐ろしい」事だ………

しかも自分の能力や才能を優れたものと過信している時はさらに始末が悪い

吉良吉影 『ジョジョの奇妙な冒険』より

知らないことを知っていると思い込む「無知」こそ、最も恥ずべき生き方なのです。

何事も決めつけず「本当にそうだろうか?自分は思い込んでるだけかもしれない」と、知識の探求を続けて成長につなげたいと思います。

まとめ

『ソクラテスの弁明』プラトン まとめ
  • 著者はソクラテスの弟子にあたる「プラトン」
  • 本書は「若者を堕落させた」容疑を受けたソクラテスが、法廷で弁明するシーンを弟子であるプラトンが書き残したもの
  • 「自分の死生観を鍛えたい人」「徳や倫理について学びたい人」におすすめ
  • 「知らないことを知ってると思い込む」のは、恥ずべき無知である
  • 「善く生きる」ことができず魂の在り方を失うのは、死より恐ろしいことである
  • 死を恐れるのは、「知らないことを知っていると思い込む」のと同じ
  • 死んでいる状態は、「何一つ感覚がない無の状態」もしくは「魂がこの世からあの世に行くこと」と予想する。いずれにせよ、恐れるものではない
  • 本書を読んで、死に対する恐怖が軽くなった
  • 本書を読んで、「善く生きる」ことについて考えるようになった
  • 本書を読んで、「知ってると思い込む」ことに気をつけるようになった

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