『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健
著者紹介
岸見一郎
日本の哲学者、心理学者、翻訳家。
専門である古代西洋哲学(主にプラトン哲学)と並行して、アドラー心理学を研究。
- 日本アドラー心理学認定カウンセラー
- 日本アドラー心理学顧問
を務める。
古賀史健
ライター/編集者。
現在は株式会社バトンズ代表。
これまでに80冊以上の書籍を担当し、数多くのベストセラーを生み出している。
主な著作は『嫌われる勇気』のほかに、『幸せになる勇気』『20代の自分に受けさせたい文章講義』などがある。
アルフレッド・アドラー
19世紀ー20世紀にかけて活躍したオーストリアの精神科医、心理学者。
ユング、フロイトと並び「心理学の三大巨頭」と呼ばれている。
フロイトと精神分析について共同研究をしていたが、途中から意見が異なることが多くなり袂を分かつことになる。
「トラウマは存在せず、人はいつでも変わることはできる」という、独自の「アドラー心理学」を提唱した。
本の概要
アドラー心理学について、哲人と青年の対話を通じて物語形式で解説する本。
「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という問いに対して、シンプルで具体的な答えを提示している。
- すべての悩みは対人関係にある
- 承認欲求を求めてはいけない
- 自由とは他者から嫌われること
など、今の日本人に対して刺さる内容となっている。
こんな人におすすめ
学びになった点
ご友人には「外に出ない」という目的が先にあって、その目的を達成する手段として、不安や恐怖といった感情をこしらえているのです。
人間は目的を達成するための手段として、感情を作り出している。
アドラー心理学では「目的論」と呼んでいます。
たとえば、引きこもりの人は「外に出たくないから、不安という感情を作り出している」と考えます。
フロイト的な原因論「過去にいじめなどのトラウマ(原因)があるから、外に出れない」という考えとは真逆です。
- 原因論…過去に何か原因があって、今の結果がある
- 目的論…過去の出来事は関係なく、目的を達成するために結果を作り出している
アドラーの目的論は、
「これまでの人生に何があったとしても、これからどう生きるかは自分で決めることができる」
という、過去ではなく現在にフォーカスした思考です。
目的論なら過去に囚われず、「今、この瞬間」から自分のライフスタイル(人生のあり方)を選び直すことができます。
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」
アドラー心理学では、「すべての悩みは、人間関係の悩みである」と考えます。
なぜなら、人間の悩みは他者との比較や競争によって生まれるからです。
たとえば、誰かと比較して「私はあの人より劣っているから、成功できない」と思うなど。
自分だけで完結する内面の悩みというのは存在せず、どんな悩みでも他者が影響しているのです。
もしこの世界から自分1人だけになり、人間関係が無くなればあらゆる悩みは消え去るでしょう。
対人関係の軸に「競争」があると、人は対人関係の悩みから逃れられず、不幸から逃れることができません。
他者と競争すると、人間関係の悩みが生まれて不幸になります。
なぜなら、競争の先には勝者と敗者がいるからです。
競争や勝ち負けを意識すると、他人と比較して「この人には勝った、あの人には負けた」と劣等感を感じ、悩みの原因となります。
また、競争のなかに身を置いている人は常に勝ち続けなければならないため、心の休まる暇がありません。
人生は他者との競争ではないのです。
他者との競争をやめることで「負けるかもしれない」という恐怖から解放され、他者の幸せを心から祝福できるようになります。
他者からの承認を認め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他者の人生を生きることになります。
自分の人生を生きるためには、承認欲求を捨てることです。
他者からの承認を求めて評価ばかり気にすると、他者の人生を生きることになります。
承認欲求を満たすために、他者の期待に応えるためだけに生きる。
このような生き方では、自分の人生を生きることができません。
私たちは、他者の期待を満たすために生きているわけではないのです。
承認欲求を否定する生き方こそ、本当の人生を生きることができるのです。
あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと――あるいは自分の課題に土足で踏み込まれること――によって引き起こされます。
人間関係のトラブルを避けるためには、「課題の分離」をすることです。
課題の分離とは「これは誰の課題なのか?」という視点で、自分の課題と他者の課題を分けることを言います。
自分と他者の課題を分けるコツは、「その選択によって、最後は誰が責任を負うのか?」を考えることです。
たとえば勉強が嫌いな子供がいたとして「勉強しなさい」と無理やり勉強させるのは、他者の課題に踏み込むことになりトラブルになります。
「勉強するかしないか」は子供の課題であり、勉強しなかった結果として成績が落ちたり進学できなくなるのは、その選択をした子供なのです。
「これは自分と相手、どちらの課題なのだろうか?」を考えることで、人間関係のトラブルを減らすことができます。
「自由とは、他者から嫌われることである」
本当の自由とは、他者から嫌われることです。
すべての悩みは人間関係にあるため、私たちが自由になるためには他者の期待に応えないこと、つまり他者から嫌われるしかありません。
誰かに嫌われるということは、他者の評価を気にせず自分が自由に生きている証です。
人から嫌われるのは辛いため、誰しも人から嫌われずに生きていきたいと思っています。
しかし、すべての人から嫌われないように立ち回る生き方は、他者の評価を気にするとなり、他人の人生を生きることになります。
対人関係における自由のコスト(代償)とは、他者から嫌われることなのです。
「幸福とは、貢献感である」。それが幸福の定義です。
幸福になるためには、「貢献感」が必要です。
貢献感を持つことで、自分を好きになることができるからです。
- 自分は誰かの役に立っている
- 社会にとって有益である
こう思うことで、自らに価値があることを実感できるのです。
この場合の他者貢献とは、「目に見える貢献でなくてもいい」ということ。
自分が役に立っているかどうか判断するのは他者の課題なので、本当に貢献できているかは分かりません。
「わたしは誰かの役に立っている」という主観的な「貢献感」さえ持てれば、それでいいのです。
この本を読んで変わったこと
人間関係のトラブルが減った
本書を読んでから、人間関係のトラブルが減りました。
なにかトラブルになりそうなときは、「これは自分の課題なのか?それとも他者の課題なのか?」という、課題の分離をするようになったからです。
自分の課題であればコントロールできるので、行動を改めたり改善に努めます。
しかし、他者の課題に対してこちらが踏み込むとトラブルになるため、基本的に「なにもしない」ことにしています。
自分を変えることはできますが、相手を変えることはできません。
自分の課題には全力で取り組み、他者の課題に踏み込まないことで人間関係のトラブルを減らすことができます。
また、「権力争いを挑まれても、絶対に乗ってはいけない」と言います。
相手が理不尽な対応をしてきた場合「この人は権力争いがしたいんだな」と思って、いち早く会話から降りるのが大事です。
他者の評価を求めなくなった
本書を読んでから、他者の評価を求めなくなりました。
承認欲求を求め続ける限り、本当の自分の人生を生きることができないからです。
ユダヤ教の教えで、
「自分が自分のために自分の人生を生きていないのであれば、いったい誰が自分のために生きてくれるだろうか」
という言葉があります。
私たちは、他者の期待に応えるために生きているわけではありません。
他者の評価は求めず、自分は自分のためにだけ生きればいいのです。
「他者貢献」を意識するようになった
本書を読んでから、「他者貢献」を意識するようになりました。
他者貢献するために実践しているのが、ブログを通した情報発信です。
私が発信した情報が、実際に誰かの役に立っているかどうかは分かりません。
しかし、自分は世の中の役に立っているという「貢献感」を持つことはできます。
私はブログを通して「この記事はきっと、世界のだれかの役に立っている」という、貢献感を感じています。
貢献感を持つことで自分の存在を認めることができ、幸福度が上がりました。
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