前回の記事に引き続き、「今年読んで良かった本シリーズ」です。
私は毎日のように図書館に通い、作業したり本を読んだりしています。
そんな読書オタクの私が「2024年版今年読んで良かった本10選」を紹介します。
2024年版 隠居人の今年読んで良かった本10選
『鬱の本』点滅社編集部
84名の作家による「鬱」をテーマにしたエッセイ集。
「毎日を憂鬱に生きている人に寄り添いたい」という思いが込められている。
特に印象に残ったのは、飯島誠さんの文章です。
一度、精神的に危険なところまで追い詰められたことのある人にとっては、求めるものは心の平穏であり、それ以外のことは大して重要ではないという心境になるものだ。その時点から物事の価値が根本から変わり、世界の色が変わる。
飯島誠『鬱の本』より
生きづらい人にとって「心の平穏以外は、大して重要ではない」という主張です。
私は過去に自殺未遂の経験をしてから、心の平穏以外に何も求めなくなりました。
精神的に追い詰められたことのある人間にとって、心の平穏以上に大事なものはありません。
『人生談義』エピクテトス
「奴隷の哲学者」と呼ばれたエピクテトスの哲学書。
エピクテトスが実践していた「ストア哲学」は、感情を理性でコントロールして不動心(アパテイア)を目指す哲学です。
不動心を手に入れるために、エピクテトスは「自分コントロールできるものに注力して、それ以外のものは気にする必要はない」と主張しました。
物事のうちで、あるものはわれわれの力の及ぶものであり、あるものはわれわれの力の及ばないものである。「判断、衝動、欲望、忌避」など、一言でいえば、われわれの働きによるものはわれわれの力の及ぶものであるが、「肉体、財産、評判、官職」など、一言でいえば、われわれの働きによらないものは、われわれの力の及ばないものである。
エピクテトス『人生談義』より
(中略)自分のものでないものを自分のものと考えるならば、君は妨げられ、苦しみ、神々や人びとを非難するだろう。だが、君のものだけを君のものと考え、自分のものでないものは、実際そうであるように、自分のものでないものと考えるならば、だれもけっして君を強制したりしないし、邪魔もしたりもしないし、君はだれをも非難したりせず、だれかを咎めることもなく、なにひとつとして不本意におこなうようなこともなく、だれも君を害することはないし、敵をもつこともないだろう。
悩みの多くは「自分でコントロールできないことを、コントロールしようとするとき」に生まれます。
たとえば、このブログを例にすると「どういう記事を書くか」「どの程度の頻度で更新するか」は、自分でコントロールできます。
しかし、「どれぐらい読まれるか」「どういう評価を得られるか」は、「われわれの力の及ばないもの」なので、自分でコントロールできません。
エピクテトスの哲学では「自分でコントロールできることに注力して、それ以外のことを気にしても仕方がない」ということが分かります。
『道は開ける』D・カーネギー
「人間が持つ悩みの解決方法」が大量に詰め込まれている本。
私は下記の、悩みの解消法が一番気に入っています。
次の4つの段階を踏めば、悩みの9割を追い払うことができる。
D・カーネギー『道は開ける』より
- 悩んでいる事柄を詳しく書き記す
- それについて自分にできることを書き記す
- どうするかを決断する
- その決断を直ちに実行する
この悩みの解決法を実践するときは、マインドマップを使うのがおすすめです。
誰しも、大なり小なり悩みを持っていると思います。
本書を読めば、その悩みを解消するヒントを得られるでしょう。
『死なないノウハウ』雨宮処凛
若者の貧困問題について多く取り扱う、雨宮処凛さんの新刊。
人生で起こりえる様々なトラブルに対して、専門家による解決策を載せた本。
タイトル通り「死なないノウハウ」が、たくさん詰まっています。
生きづらさを抱えている人は、お金や仕事に不安があると思います。
この本を手元に置いておけば、上記の悩みで困った時の役に立ってくれるはずです。
『自省録』マルクス・アウレリウス
古代ローマ皇帝が残した手記をもとに、書籍化したもの。
マルクス・アウレリウスはストア哲学を実践しており、エピクテトスの影響を強く受けています。
格言が多い1冊で、私が特に気に入っているのは、
「ブドウの樹のように、見返りを求めず人に与えなさい」
という教えです。
ある人は他人に善事を施した場合、ともすればその恩を返してもらうつもりになりやすい。第二の人はそういう風になりがちではないが、それでもなお心ひそかに相手を負債者のように考え、自分のしたことを意識している。ところが第三の人は自分のしたことをいわば意識していない。彼は葡萄の房をつけた葡萄の樹に似ている。葡萄の樹はひとたび自分の実を結んでしまえば、それ以上なんら求むるところはない。(中略)であるから人間も誰かによくしてやったら、〔それから利益をえようとせず〕別の行動に移るのである。あたかも葡萄の樹が、時が来れば新に房をつけるように。
マルクス・アウレリウス『自省録』より
私も見返りを求めず「自分が持っている、価値のある情報は何か?」を考えて、情報発信しています。
もし私が見返りを求めていたら、途中で心が折れて情報発信を続けることはできなかったでしょう。
『シン・ファイヤー』稲垣えみ子、大原扁理
作家の稲垣えみ子さん、大原扁理さんの二人が書いた共著。
昨今ブームとなっているFIREについて、二人で話し合っていく内容となっています。
既存FIRE論は、
「年間支出の25倍貯めて、4%ルールで切り崩していきましょう」
みたいな、お金に頼った幸福論に近いです。
しかしそれは、「お金の心配を無くすために、お金をたくさん貯めましょう」という矛盾があります。
「お金を貯めることができない」からお金の心配をしてるのに、お金の心配を無くすために「お金をたくさん貯めましょう」と言われても、無理な話ですよね。
二人が出した新しいFIRE論は「お金以外の幸せになる手段をたくさん持つ」こと。
私は本書の中で、仕事に対する大原さんの言葉が心に残りました。
働くということは少なからず「人間であることをやめる」時間だったんですね。(中略)たとえばお客や上司に理不尽に怒られても耐えなきゃいけなかったり、食事をする時間や休む時間をとれない時には「これじゃ人権がないじゃないか!」と思っていました。そういうことも守らない仕事に、これが定年まで続くのか、と思う絶望感は分かる気がします。
稲垣えみ子、大原扁理『シン・ファイヤー』より
私も大原さん同様に「人間であることをやめる時間」を無くすため、ミニマルに暮らしています。
二人とも私が好きな作家さんなので、学びになる点が多かったです。
『生まれてきたことが苦しいあなたに』大谷崇
「ペシミストの王」と呼ばれる「エミール・シオラン」の哲学入門書。
シオランの哲学は「労働の拒否と怠惰の礼賛」がベースとなっており、私と価値観が似ていると思いました。
一般に人間は労働過剰であって、この上さらに人間であり続けることなど不可能だ。労働、すなわち人間が快楽に変えた呪詛。もっぱら労働への愛のために全力をあげて働き、つまらぬ成果しかもたらさぬ努力に喜びを見出し、絶えざる労苦によってしか自己実現できぬと考える――これは理解に苦しむ言語道断のことだ。
エミール・シオラン『絶望のきわみで』より
特に「勤勉な人間が犯罪を犯す」という発想は私には無いものだったので、とても勉強になりました。
私たちに健全な部分があるとすれば、それはすべて私たちの怠け癖のたまものである。行為に移ることをせず、計画や意図を実行しようとしない無能力のおかげである。〈美徳〉を養ってくれるのは、実現の不可能性、あるいは実現の拒否だ。そして、全力を出し切ろうとする意志こそが、私たちを暴虐へ誘いこみ、錯乱へと駆りたてるのである。
エミール・シオラン『生誕の災厄』より
怠惰な人間が悪いことをしようとしても、準備・計画するエネルギーがないため、実行に移すことはありません。
しかし、勤勉な人間が悪いことをしようとしたら、準備・計画するエネルギーがあるため、すんなりと実行してしまうのです。
ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか
日本人とドイツ人の働き方、ライフスタイルの違いについて書かれた本。
本書を読めば「ドイツ人は日本人より平均所得が少ないのに、なぜ生活満足度が高いのか?」が分かります。
結論から言うと、
- ドイツ人は生活にお金をかけない→食事はパン、ハム、チーズなど質素。スーツ1着のみで、おしゃれには無関心
- ワークライフバランスが取れている→有給消化率100%、長期休暇も取れる
- ドイツ人は過剰サービスをしない→日本のような過剰サービスが必要ないため、労働者の負担が少ない
この3つが、大きな理由です。
「生活にお金がかからないため無理して働く必要がない」こと、「労働環境が日本より優れていること」が大きな違いです。
『【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学』両@リベ大学長
ベストセラーの『お金の大学』を、加筆・修正した本。
個人的に良いと思った、前著からの変更・追加点は次の通りです。
前著も素晴らしい出来でしたが、良質な情報が追加され更にパワーアップしてます。
中でも「結論リスト」の追加は大きいと思っていて、情報が多い本のため「まとめ項目」が以前から欲しいと思っていました。
本を読む時間がない忙しい人でも、結論リストを読むことで「これから何をしたらいいのか?」が、ひと目で分かるようになっています。
『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』山崎元
ガンで余命宣告された経済評論家の山崎元が、息子に書いた手紙を書籍化したもの。
タイトルの通り、経済評論家の視点で「お金」「人生」「幸せ」について大事なことが詰まった1冊。
私が印象に残ったのは、山崎さんが現代のマーケティングについて言及しているところです。
世間が称えるマーケティングとは、「本来の価値以上の価格でたくさんのモノを売るための技術の集大成」だ。「ボッタクリのテクニック集」だとも言える。消費者は、マーケティングのおかげで、無駄なモノや無駄に高いモノを買わされている。
山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』より
私も自分が書いた本の中で、
「私たちはお金を『使っているの』ではなく、マーケティングによってお金を『使わされている』」
と書きましたが、山崎さんと同じ意見だったようです。
山崎元さんの本は、本書以外にも、
『ほったらかし投資術』
『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください』
など、お金の知識が無くても分かりやすい本が多いです。
私は山崎さんの本から、たくさんのお金の知識を学びました。
本当に素晴らしい方を亡くしました。ご冥福をお祈り申し上げます。
総評
この記事では「隠居人の今年読んで良かった本10選」を紹介しました。
今年もたくさんの良い本と出会えて、多くを学ぶことができました。
来年も良質な本を通じて、成長していきたいと思います。
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