著者紹介
石井あらたさん。
1988年生まれ、名古屋市出身。自称「山奥ニート」。
浪人・留年・中退の親不孝三重奏でひきこもり。
2014年から和歌山県の山奥に移住。NPOの支援を受けるはずが、移住3日後に代表が亡くなり、理事として自主運営を開始。 人口5人の限界集落に建つ木造校舎に、ネットを通じて集まった男女15人と暮らしている。
2017年に会社員の女性と結婚。現在は山奥と街の二拠点生活をしている。
Xアカウント:https://x.com/banashi
ブログ:https://banashi1.hatenablog.com/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCk7EFLqHKsmhglkDBG1wiNQ
本の概要
山奥ニートの生活について書かれた本。
和歌山県の山奥にあるシェアハウス「共生舎」では、ニートが集まり共同生活をしている。
社会の中でうまく生きられない人でも、山奥ニートになれば月1万8000円で生きていける。
ほとんどのケガや病気は仕事が原因であり、将来のケガや病気に備えて働くのは本末転倒である。
世の中には「働くことで、余計な仕事を増やしてしまう人」が一定数存在して、労働に向いていない人は働かないほうが社会貢献になる。
しかし、仕事をしなければ生活ができず、自分の居場所を失ってしまう。
社会のどこにも居場所が無ければ、自分で作ってしまえばいい。
弱者には弱者の生き方、生存戦略がある。
「生きづらい人・社会不適合者は、どう生きればいいのか?」今までに無かった新しい生き方を学べる1冊。
こんな人におすすめ
学びになった点
家賃のために働いてはいけない
家賃というのは一体なんなんだ。眠るためだけなのに、お金がかかる。これが人権侵害でなく、なんだと言うんだ。
家賃は収入の3分の1が妥当、なんて言葉を聞いたことがある。なんだそりゃ。
つまり、労働時間の3分の1は、家賃を払うためにある。週5勤務なら、月曜と火曜は寝所の確保のためだけに働かなきゃいけない。
「家賃は少なければ少ないほど良い」と考えています。
なぜなら、家賃のために働く時間が減るからです。
たとえば、給料の1/3を家賃に充てているなら、仕事の1/3は家賃のために働いていることになります。
1か月21日出勤したとしたら、1週間はタダ働きしているようなものです。
家賃が少なければ少ないほど、労働から解放されて自由になります。
生活費の中で、もっとも減らすべきなのは「家賃」です。
月2万円あれば生きていける
山奥ニートの支出について話そう。
1カ月1万8000円。
これさえあれば、この山奥で生きていける。
僕らは月にこの1人1万8000円を徴収して、それを食費、光熱費、通信費、その他すべてに充てている。
生きるだけだったら、これ以外のお金は要らない。
山奥ニートの石井さんは、1か月1万8000円で生活しているそうです。
単身世帯 | 山奥ニート | |
合計 | 162833円 | 18000円 |
食費 | 40026円 | 9000円 |
住居費 | 22645円 | 0円 |
電気代 | 5852円 | 4147円 |
ガス代 | 3104円 | 1229円 |
上下水道料 | 2142円 | 254円 |
交通費 | 14626円 | 1500円 |
通信費 | 6911円 | 263円 |
交際費 | 14857円 | 0円 |
石井さんは生き方を工夫することで、月2万円生活を実現しました。
私も独自の生き方を模索して、いまは月3万円ほどで生活しています。
生きづらい人は、生活コストを下げることで生きやすくなります。
金銭感覚を10分の1にする
どうも山奥にいると、金銭感覚がおかしくなってくる。
なんせひとり暮らしの日本人の平均的な生活費に対して10分の1ほどのお金で生活している。
だから、僕らの金銭感覚は一般的な日本人とゼロがひとつ違う。
1000円のものを買うときも、1万円のものを買うときと同じように悩む。
1万円のものは10万円。100円のものを買うときだって、僕らにとっては1000円だから、気軽な出費ではない。
金銭感覚を下げて生活することで、無駄な出費を減らすことができます。
普通の人が「安い」と思って買っているものでも、「高い」と感じるようになるからです。
たとえば、山奥ニートの石井さんは、一般的な日本人の10分の1ほどのお金で生活しています。
普通の人が100円で「安い」と思って買っているものでも、石井さんからしたら1000円なので、「高い」と感じて気軽には買えません。
金銭感覚を一般人より下げることで、お金を大事に使うようになり、無駄な出費をせずに済みます。
私も石井さんと同じで、一般人の1/10ほどの金銭感覚で生活しています。(普通の人の1万円が10万円ぐらいに感じる)
日本は仕事さえしなければ良い国
英金融大手HSBCホールディングスが2019年に発表した「働きたい国ランキング」では、日本は33カ国中32位だった。
日本は働くには大変な国だ。
収入は他国と比べて多いわけじゃないのに、どんな小さな仕事にも完璧が求められる。
でも、代わりに食べ物は安い。治安もいいし、インフラも今のところ整っている。
なにより言葉が通じるってのは便利だ。
(中略)働きすぎなければ、日本はいい国だと思う。
日本という国は、仕事さえしなければ良い国だと思います。
労働環境以外は、衣食住のすべてが高水準だからです。
私が海外を一人旅していたときも、「日本は良い国だよね。食べ物美味しいし、治安は良いし」と外国の人は口を揃えて言います。
しかし、「日本に住みたいと思いますか?」と聞くと「いや、住みたいとは思わないね。日本人はワーカーホリックだから」と言っていました。
つまり、「日本は仕事さえしなければ良い国」だということです。
日本は労働環境以外、素晴らしい国なので「どうすれば働かずに暮らせるか?」が重要になってきます。
時間軸をずらせば、モノは無料で手に入る
古くなったゲームは遊ぶ人が少ないから、安く手に入る。
コントローラーのボタンが壊れたから、ネットで譲ってくれるようお願いしたら、すぐにたくさん送ってもらえた。おまけにソフトも同梱されていた。
最新のゲームソフトが無料で送られてくることは、まずありえない。でも、古いものだったらそれがありえる。
時間軸をずらすことによって、対価が必要な商品から無償で受け取れる恵みに変わる。
時間軸をずらすことで、本来お金が必要なモノでも無料で手に入ることがあります。
当時は高額だった商品でも、時間が経って古くなるとほとんど価値が失われるからです。
石井さんは1996年に発売された「ニンテンドー64」のコントローラーを、無料で譲ってもらったそうです。
これが最新のPS5やNintendoSwitchだったら、おそらく無料でもらえることはなかったでしょう。
私の場合、最新スマホは買わず2~3年前の型落ちスマホを、フリマアプリで買っています。
発売当時は4~5万するスマホも、3年も経てば1万円ほどで買えるからです。
時間軸をずらせば、モノは無料または格安で手に入れることができます。
欲しいモノがあってもすぐに買わず、数年待てば半額以下で買うことができます。
ほとんどの病気の原因は「仕事」
病気のほとんどの原因は仕事なんじゃないかと思う。
(中略)仕事に追われて病院に行く暇すらない生活をしているより、お金はなくても時間がたくさんあってのんびりしてるニートのほうが絶対に健康的だと思う。
山奥でニートしてるって人に言うと、みんな僕が将来病気になったときのことを心配する。だけど、働くことで病気になるリスクを増やして、病気に備えるのは本末転倒なんじゃないだろうか。
ほとんどの病気の原因は「仕事」だと思います。
うつ病などの病気は、仕事のストレスによって引き起こされるからです。
たとえば私は、仕事をしていないときは健康体で精神的にも安定しています。
しかし、仕事をすると鬱病や、不眠・食欲不振といった体調不良に襲われます。
現代人を苦しめる、多くの病気の原因は「仕事」にあるのです。
「将来に備えて働いて病気になる」よりも「病気にならないように今を大事にして生きる」ほうが、いいのではないでしょうか。
ケガや病気に備えて働いているのに、その仕事が原因でケガや病気になったら本末転倒です。
鬱になると正常な判断ができなくなる
自殺するくらいなら辞めればいい、なんて簡単に言うけど、そんなことは無理だ。
精神的に追いつめられていると、正常な判断ができない。
今でも自殺のニュースを目にするたびに、どこか平行世界の自分が死んだんだと感じる。
鬱病になると、正常な判断ができなくなります。
なぜなら、鬱病になると視野が狭くなって他の選択肢が見えなくなってしまうからです。
よく「自殺するぐらいなら辞めればいいのに」と言う人がいます。
しかし、鬱病の人は「仕事を辞める」という選択肢が見えなくなっているので、逃げ道を失い自殺してしまうのです。
私自身、会社員のとき仕事を辞めるという発想が無く「生きてても辛いだけなら、死んだほうがマシだ」と思って、自殺未遂に至りました。
ひとたび鬱病にかかってしまうと正常な判断ができなくなるので、鬱病になる前に仕事を辞めるのが大事です。
鬱病になってから治すのは難しいため、鬱病を防止する・鬱病になる前に手を打つ対策が必要です。
働かないことで、社会に貢献する
世の中には労働に向いている人と、向いていない人がいる。
向いていない人は、働けば働くほど周りに損害を与える。
会社でたくさんの人が働いているけど、その中で給料分の働きをしているのはきっと一部だ。
それ以外の人は、働いているふりをしているだけで、むしろ足を引っ張っている人もいるんじゃないだろうか。
世の中には「働かないことが、社会貢献になる人」がいます。
無理して働いて人の邪魔をするよりも、働かないことで人の邪魔をしないほうが、スムーズに仕事が終わるからです。
私は仕事ができない人間なので、いろんな職場に行ってはミスを連発して、仕事を終わらせるどころか逆に仕事を増やしてしまいます。
世の中には、
「いないほうが、会社のためになる人」
「いるだけで、職場の雰囲気を悪くする人」
「働くことで、余計な仕事を増やしてしまう人」
がいるのです。
労働に向いていない人は、働かないほうが社会貢献になります。
日本の生きづらさの要因について
今の世の中は生きづらすぎる。自分が若いときはものはなかったが、こんなに窮屈じゃなかった。
人にはそれぞれ、自分に合った履物がある。
なのに、今は既製品の靴に、無理に足を押し込んで履いている。
だから、歩いているうちにすぐ足が痛くなる。それじゃダメだ。
靴に足を合わせるんじゃなく、足に靴を合わせなきゃいけない。
日本の生きづらさの要因として、「世間が作った幸せに縛られている」ことがあります。
「既製品の靴=世間が作った幸せ」に縛られていると、「自分に合った履物=自分にとっての幸せ」を手に入れることができないからです。
過去の私も、
「親兄弟と仲良く暮らす」
「結婚して子供を作り、家庭を持つ」
「立派な仕事に就いて、社会に貢献する」
といった、世間が作った幸せに縛られて苦しんでいました。
「世間の幸福像」は、あくまでも他人が決めた幸せであり、自分の幸せは自分で作らなければいけません。
「幸せはDIY」大原扁理さんの言葉 『シン・ファイヤー』より
未来のことを考えるから、不幸になる
これから先のことといっても、10年スパンとかでは考えたくないですね。しんどいだけじゃないですか。
日本人は先のことを考えすぎなんじゃないですか。
そんなの知るか。ファックですよ。意識低くありたいです。
不安や心配事の要因として「あるかどうか分からない、未来を考えてしまうこと」があります。
「今の仕事を辞めたら、再就職できるか分からない…」
「貯金しないと、老後にお金が足りなくなるかもしれない…」
「自分の意見をハッキリ言って、人に嫌われてしまったらどうしよう…」
このように、心配事のほとんどは「現在ではなく未来を考えること」で生まれるのです。
不安や心配を無くすためには、未来ではなく「今この瞬間」を大事にしましょう。
禅の教えでは「「即今・当処・自己(今、ここで、わたしが生きる)」を重視します。
どこにも居場所がない人
福祉を受けるほど、働けないわけじゃない。
会社員になるほど、働けない。
自分で起業するほど、積極的じゃない。
自分で死ぬほど、消極的じゃない。
そんな中途半端な僕たちには、どこにも居場所がなかった。
社会に居場所がないことは、生きづらさの要因となります。
自分の居場所が無いと、生きていくことができないからです。
- 会社で働ける人は、給料で生きていける
- 起業できる人は、自分で稼いで生きていける
- 働けなくても障害がある人は、生活保護で生きていける
いずれも該当せず、社会のセーフティネットから漏れてしまった人たちは居場所を失い、過酷な人生を歩むことになります。
私も石井さん同様に、社会のどこにも居場所が無かったので、自ら居場所を作りました。
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