著者紹介
伊藤洋志さん。
1979年生まれ。香川県丸亀市出身。京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修士課程修了。
大小様々な仕事を組み合わせて生計を立てるナリワイ実践者。
2007年より、個人が小さい元手ではじめられる頭と体をつかう仕事をテーマにナリワイづくりを開始。
伊藤さんが手がけるナリワイとして「モンゴル武者修行ツアー」「木造校舎ウェディング」などがある。
本書のほかに『フルサトをつくる』『イドコロをつくる 乱世で正気を失わないための暮らし方』などの著書がある。


本の概要
収入源と生活の充実を兼ねた「ナリワイの作り方」について書かれた本。
現代人の生活はお金に依存しているため、なにも考えずに暮らすと支出が高くなる。
そのため、毎月の支払いに追われてしまい、生き方についてじっくり考える余裕が無い。
生活費を稼ぐためにやりたくない仕事をして、心身ともに疲弊する毎日。
これでは、人生を盗まれている。
人生を盗まれないようにするためには、
- 生活自給力を高める
- 無駄な支出を無くす
- 会社に依存せず「ナリワイ」で生きる
これらの考えが重要になってくる。
生活自給力とは、モノやサービスなど「自分の欲しいもの」を、なるべくお金を使わずに手に入れること。
生活自給力を高めて無駄な支出を無くすことで、あくせく働く必要が無くなり、気持ちに余裕が生まれる。
「お金を使わず欲しいものを手に入れる工夫」が、そのまま「ナリワイ」となり収入源となる。
「ナリワイを仕事と生活の中心においた、お金に依存しない生き方」を学べる一冊。
こんな人におすすめ
- 自分の力でお金を稼ぎたい人
- 会社勤めに疑問を感じている人
- 低年収でも豊かに暮らしたい人
学びになった点
ナリワイとは?
個人レベルではじめられて、自分の時間と健康をマネーと交換するのではなく、やればやるほど頭と体が鍛えられ、技が身につく仕事を「ナリワイ」(生業)と呼ぶ。これからの時代は、一人がナリワイを3個以上持っていると面白い。
ナリワイの条件は以下の3つ。
- 個人レベルで始められる
- やればやるほど頭と体が鍛えられる
- 生活に役立つ技(スキル)が身に付く
ナリワイとは、いわゆる「生活の延長線上にある、スモールビジネス」だと思います。
専業でやるほどではないけど、自分のライフスタイルと同期して、さらに小銭が稼げるような仕事。
それが伊藤さんが提唱する「ナリワイ」です。

1つのナリワイで大きく稼げなくても、月3万円ほど稼げるナリワイを複数持つことで、豊かに暮らしていけます。
生きづらさの要因
過労死、派遣切り、ニート問題、と現代日本の働くこと・暮らすことについての矛盾は顕在化してきている。「働き方」の本が次々出たり、憧れの仕事人番組が人気だが、裏を返すと、働き方や暮らし方について行き詰っていることの現れでもある。私は、この行き詰まりの大きな要因の一つは、仕事の多様性の低下であると考えている。
生きづらさの要因の一つとして「仕事の多様性が低下したこと」が挙げられます。
なぜなら、働き方の選択肢が少ないことで、うまく働けない人が出てくるからです。
本書の中で、大正時代に3万5000種あった職業が、現代では2167種まで減ったと書かれています。
昔の仕事は多岐にわたるため、あまり能力が無い人でも、どこかしら働ける場所がありました。
しかし、今では職業が減ったことによって働き方の選択肢狭まり、既存の職業にうまく適応できない人が出てきてしまったのです。
「働き方の選択肢」が減ったことで働けない人が増えて、ニート・引きこもりが社会問題となっています。
社会に適応できない人に必要なのは「既存の働き方に囚われない、新しい働き方」を見出すこと。
会社に依存しない、自分だけの働き方を見つけることで、生きづらさを解消することができます。

ニートや引きこもりなど、生きづらい人が増えた要因として、働き方の選択肢が減ったことが挙げられます。
負の無限ループ
全てのナリワイは、個人の特別な才能や、多額の元手がなくてもスタートすることができ、やればやるほど自分の技能が育ち、頭と体が鍛えられる、というものでなければならない。お金を稼ぐために、極度のストレスを受けて、そのストレス解消のために散財する、ということになると、訳が分からないではないか。
私が会社員をしていた時は、
- 仕事でストレスが溜まる
- ストレス発散のためにお金を使う
- お金が無くなり、また働く…
この無限ループでした。
「お金を稼ぐためにストレスを溜めて、そのストレスを発散するためにお金を使う」
これでは、いつまで経っても幸せにはなれません。
幸せに生きるためには「仕事=我慢してやるもの」という発想を変える必要があります。

「仕事でストレスを溜めて、仕事で稼いだお金を使ってストレス発散する」。
まさに「負の無限ループ」でした。
悪化する労働環境
事業やサービスには一見問題はないように見えるが、サービスを提供する側に過剰な苦労が生まれ、健康が損なわれていたり、人間の動物的限界を超えたペースやサイズになっていることも多い。例えば、かつては安かろう悪かろうであって居酒屋チェーン店も、近年はそこそこいい食材でまあまあ美味しく、それでいて値段もお手頃になってきた。いいことばかりのように思えるが、人間の限界に挑戦している労働環境であったりもする。
サービスが良くなるほど、労働環境は悪くなっていきます。
なぜなら、安くて良いサービスを提供するためには、それだけ労働者の負担になるからです。
人件費を減らすための無理なワンオペ、長時間労働など。
「サービスを受ける側」の満足度は高まる一方で、「サービスを提供する側」の負担は大きくなっています。
企業努力と言えば聞こえはいいですが、現場の人間を酷使する労働環境が増えつつあるということです。

サービスが良くなるほど仕事が増えて、サービスを提供する側の労働環境は悪くなっていきます。
非バトルタイプの戦略
バトルタイプに非バトルタイプの人が勝つには、一筋縄ではいかない。非バトルタイプの人たちは、どうにかして正面から戦わずしてそこそこ稼ぎ、健康的に暮らしを立てていく具体的な作戦を考えていくことが必要になってくる。
他者との競争が苦手な「非バトルタイプ」が生き残るには、戦略が必要です。
具体的には、
- ミニマルに暮らすこと
- 他人と競争しないこと
- たくさん稼ごうとしないこと
この3点が重要です。
ミニマルに暮らせば、あまり稼がなくても生活できます。
また、たくさん稼ごうと思わなければ、バトルタイプと競争せずに済みます。
非バトルタイプの人は、真っ向から戦わずに生き残れるような戦略を練りましょう。

メジャーな仕事だとバトルタイプとの競争になるので、非バトルタイプの人は生き残れません。
ミニマルに暮らして生活コストを減らし、あまり注目されない小さな仕事を「ナリワイ」にして稼ぎましょう。
行動するのが一番大事
現代社会は、事前情報が多すぎるので、いつまでたっても始められない、ということが頻発する。とりあえず小さい規模でいいので、何かしら実行してみて自分の身体で経験を得る、ということが肝心だ。二次情報をいくら集めても、それの正誤を判断するための体験が自分に足りないと、集めた情報を役立てることができない。
情報を集めるのも大事ですが、それよりも行動することが大事です。
なぜなら、実際に行動して体験してみないと、集めた情報を役に立てることができないからです。
私の経験だと、ブログを始める前にブログに関する本を10冊以上読んでから始めました。
しかし、実際にブログを始めてみると本の中に書いてある情報が自分に合わず、うまく役立てることはできませんでした。
どれだけ情報を集めても、やってみると情報通りとはいかず、必ず失敗します。
行動に失敗は付き物なので、やりながら改善していけばいいのです。

始める前に情報を集めすぎると、かえって動き辛くなります。
情報収集はほどほどにして、とりあえずやってみることが大事です。
私のナリワイについて
ナリワイに取り組む者がまずやるべきことは、つまらない支出を見つけ出し、自分でもこりゃ面白いと思える方法でカットすることだ。さらにすごいのは、その技が優れていれば、それを他人にも提供して、即それがナリワイの一つになる。一石二鳥である。
私は「自分が面白いと思う節約術」を、ナリワイとしています。
たとえば、当ブログでよく読まれている「月5万円で生活する方法」など。
ブログで紹介した節約術を一冊の本にして、少額ですが収入を得ています。
「自分が面白いと思う方法で支出をカットする。その技が優れていれば他者に提供して、ナリワイとなる」
ナリワイは節約になり、収入にもなるので一石二鳥です。

ブログ、YouTube、本の執筆。
やればやるほど頭が鍛えられスキルが身に付く、私の「ナリワイ」です。
給料を人質に取られる会社員
体力的にも精神的にもあまりにきつくて会社を辞めたいが、辞められないという理由の一つに、辞めたら給料がなくなる恐怖というものがある。収入が途絶えると、何もできなくなるんじゃないかと怖くなるのだ。(中略)現代社会では、まともな判断ができる状態を保つのは思っているよりも難しい。正気を保っているだけでも敢闘賞をもらってもいいぐらいだ。
私が会社員だったとき、どれだけ仕事が辛くても辞めることはできませんでした。
なぜなら、仕事を辞めて収入が無くなることに対して、恐怖していたからです。
「仕事を辞める→収入が無くなる→生活できなくなる→死…」という考えに怯えていました。
まさに「給料を人質に取られ、理不尽な仕打ちに耐える奴隷」でした。
このような状態では、まともな思考ができるはずはありません。
仕事をやめた後のことまで考えると、仕事は中々辞められないものです。
「後のことは、仕事をやめてから考えればいいや」ぐらいの気持ちで、仕事は辞めて良いと思います。

会社員のときは給料を人質に取られて、どれだけ理不尽なことがあっても屈辱に耐えるしかありませんでした。
家賃を制する者は蓄財レースを制す
消費といっても多岐にわたる。そこでまずは金額の大きい分野にターゲットを絞りたい。すると現代社会での支出の第一はほとんどの人にとって「住」に関するものである。二位以降は人によるだろうが、食費、交通費、交際費、娯楽費(飲み会とか)、通信費(携帯代など)、医療費や子どもがいれば教育費などが続くだろう。まず、生活の中で大部分を占める家のコストを通して、「お金を使う」ということの意味することを考えてみたい。
最大の固定費である家賃を下げることができれば、かなり生活はラクになります。
なぜなら、家賃というのは、支出の中でも大きな割合を占めるからです。
賃貸で暮らす人の平均支出が189,252円で、そのうち家賃は53691円。
支出における家賃の割合は、全体の約25%~30%に及びます。
私は大分県杵築市にある家賃1万円アパートに引っ越してから、あくせく働く必要が無くなり、生きるのがラクになりました。
名著『お金の大学』には「家賃を制する者は、蓄財レースを制す」という言葉があります。
人生をラクに生きるためには、家賃を見直してみると良いでしょう。

杵築市の家賃1万円アパートに引っ越せば、月5万円ぐらいで生活できます。

お金を使わない生活を楽しむ
自分なりに不必要なお金を使わないような掟を設けて、その中でいかに痛快で豊かと思える生活を送るか、ここがナリワイ的生活の基本戦略だ。また、それはただ単に節約するということではない。もはやお金を浪費して何か快楽を買う、というのはむしろつまらないのである。いかにお金を費やさずにやるか、こっちのほうが面白い。
ナリワイの基本戦略は「お金を使わない生活を楽しむこと」。
「お金を使って欲しい物を得る」より「お金をかけずに欲しい物を得る工夫」をするほうが面白いからです。
私の場合、娯楽には一切お金をかけずに余暇時間を楽しんでいます。
- 読書→図書館に行けば本が無料で読める
- 創作活動→はてなブログ、Avintlなど。無料ツールでも創作はできる
- フリーゲーム→中には有料のゲームより面白いものが無料でプレイ可能
「お金で買う」「お金を払って楽しむ」という、お金ですべてを解決する考えは、創造性に欠けてつまらないものです。
お金を使って何かをする前に「お金をかけずに、似たようなことができないか」考えてみましょう。

私は「お金をかけずに生活を楽しむ工夫」をしているため、月3万円ぐらいで楽しく生活できています。
まとめ
- ナリワイとは、個人レベルで始められるスモールビジネスのこと。やればやるほど頭と体が鍛えられて、生活の役に立つ技が身につく
- 生きづらさの要因の一つとして、職種が減ったことによる「仕事の多様性の低下」が挙げられる
- いまの日本社会は「仕事でストレスを溜める→ストレス発散のためにお金を使う→お金が無くなり、また働く…」という、負の無限ループとなっている
- サービスが良くなるほど、サービスを提供する労働者の負担は増える。結果的に、日本の労働環境は悪化の傾向にある
- 非バトルタイプの人が生き残るには、バトルタイプと正面から戦わずに済む戦略が必要
- 情報を集めすぎると、かえって動き辛くなる。情報収集よりも、行動することが大事
- 私のナリワイは「ブログ、YouTube、本の執筆」。どれも頭が鍛えられてスキルが身につき、貴重な収入源なっている
- 会社員は給料を人質に取られているため、収入が無くなることの恐怖に怯え、会社を辞めたくても辞められずにいる
- 家賃は支出の中でも、大きな割合を占める。家賃を下げることができれば、人生の難易度はずっと下がる
- お金を使わずに生活を楽しむのが、ナリワイの基本戦略。「お金を使って欲しい物を得る」のではなく、「お金を使わずに欲しい物を得る工夫」をする
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