著者紹介
マサチューセッツ州、コンコード市出身の思想家・文学者。
ハーバード大学卒業後、コンコードの公立学校で教師を務めたが、教育制度に失望してたった2週間で退職。
その後は文筆業に専念し、生涯を通じて定職に就くことはなかった。
ウォールデン湖の近くにある森の中に小屋を建て、半自給自足の生活を2年2カ月間送る。
本の概要
約2年2カ月に及ぶ、ソローの森の中での生活を記録したもの。
ウォールデン湖の近くにある森の中に小屋を建てて、半自給自足の生活を送る。
食事はイーストを使わない素焼きのパンを食べて、読書を楽しみ質素に暮らす。
ソローは自身の生活を「生きるための実験」と称して、1年のうちたった6週間の労働で生活できることを証明した。
無駄なものを削ぎ落した生活は、現代のミニマリストに近い。
「人間はなぜ、過酷な労働をしなければならないのか?」
「労働から解放されて自由になるためには、どうすればいいのか?」
仕事や人生に対する価値観が変わる一冊。
こんな人におすすめ
学びになった点
労働は終わりがない苦痛
ヘラクレスの十二の「大業」すら、私の隣人たちの労働に比べれば遊びです。「大業」は十二にすぎず、終わりがありました。ところが私は、隣人たちの誰かがついに怪物を殺し、捕らえた場面を、見たことも聞いたこともありません。隣人たちが仕事をやり遂げた場面は、一度も見聞きしていないのです。
ギリシャ神話に登場する英雄の偉業すら、労働による苦痛には敵いません。
ヘラクレスの十二の試練には終わりがありましたが、労働には終わりが無いからです。
ベストセラーとなった『LIFE SHIFT』によると、いま50歳未満の日本人は100歳以上まで生きる可能性が高いと言います。
金融庁が出した「老後2000年問題」は有名ですが、長すぎる老後を過ごすには年金だけでは足りず、一生働き続けなければなりません。
労働から解放されるためには、生活コストを減らしたり不労所得を作るなど、何かしらの対策が必要です。
なにも考えずに漠然と働いている限り、人生を労働に支配されてしまうでしょう。
私たちは働くために生まれてきたわけではありません。
幸せに生きるための手段として働いているのです。
生活に必要不可欠なもの
私たち人間の“生活に必須な物”といったどうでしょう。食物と避難所(住居)に加え、衣服と燃料という四つの項目を挙げなければなりません。人は、これら四つの“生活に必須な物”を手に入れて初めて、生活の次の段階の問題を考える用意ができます。そして、人として生きる自由を得て、暮らしの展望が開けます。
ソローは人間の生活に必要不可欠なものを、次のように挙げています。
これら四つの「生活に必須な物」を手に入れることで、その後の余暇活動や自己実現といった問題を考えることができます。
衣食住とライフライン(電気、ガス、水道)が揃って初めて、人生を楽しむ余裕が生まれるということです。
マズローの五段階欲求でも「生理的欲求」「安全欲求」を満たすことで、それ以外の欲求を満たすことができると言います。
衣食住とライフライン。
これが本当の意味で「生活に必要な物」です。
豪華な食事はいらない
私はこの八カ月に続く二年近くの森の暮らしを、イーストを使わないライ麦とトウモロコシの粉、ジャガイモ、米、ごく少量の塩漬けの豚肉、糖蜜、塩で生きました。飲み物は水だけでした。
幸せに生きるためには、豪華な食事は要りません。
食事の質よりも、自由な時間のほうが大事だからです。
ソローは食事にお金はかけず、イーストを使わない素焼きのパンを食べ、自由を手に入れました。
私の食事は、玄米・味噌汁・漬物といった質素なものです。
質素な食事でも、労働から解放されて自由になれたため、幸せを感じています。
「水とパンがあれば、神と幸福を競うことができる」
古代ギリシャの哲学者、エピクロスの言葉です。
モノより自由がある幸せ
私は、これよりあれが好きといったように、興味を惹かれる物や事柄がいつもあります。中でも自由が好きです。私は厳しい暮らしはいくらでも耐えることができ、贅沢なカーペット、美しい家具、美味な食事、ギリシャ調やゴシック調の住居などを手に入れるのに、貴重な時間を使いたくありません。
贅沢品・嗜好品といったモノを所有すると、自由な時間が奪われます。
高価なモノを手に入れるためには必要以上に働かねばならず、何よりも大事な自由が犠牲になってしまうからです。
大きな家、高級外車、ブランド品など。
これらを手に入れようとすると、長時間の労働が必要となり、多くの時間を失います。
人生に不要なモノを手放した分だけ、人は労働から解放され自由になれます。
人生に断捨離・ミニマリズムの思想を取り入れることで、自由な時間は増えます。
週1日働けば生きていける
私は、五年を超える歳月を自分の手で働いて生きた経験から、一年につき六週間ほど働けば、暮らしに必要なあらゆる代価をまかなえることを発見しました。つまり私は、その程度働くだけで、冬の日のすべてと夏の日を大部分を自由にし、研究のために空けることができたのです。
生活コストを減らした分だけ、人は労働から解放されます。
生活費を稼ぐために、働く必要が無くなるからです。
ソローは「一年につき六週間、週1日働けば生きていける」と言いました。
大原扁理さんは週2日働いて、年収90万円ほどで暮らしていたようです。
ちなみに私の年収も90万円ほどですが、月5万円以下で生活しているため、最小限の労働で済んでいます。
自由を手に入れるためには、生活コストを減らすことです。
ミニマム・ライフコスト(生活に必要な最低限のお金)を少なくすることで、働く必要が無くなり自由になれます。
家を手に入れると貧しくなる
ようやく家を手に入れると、農民は豊かどころか、お金の面でも、精神の面でも、貧しくなっています。農民が家を手に入れたのではなく、家が農民を手に入れたのです。
持ち家を手に入れると、生活は貧しくなっていきます。
ほとんどの持ち家は、お金を浪費する「負債」となるからです。
ロバート・キヨサキの名著『金持ち父さん、貧乏父さん』には「持ち家はお金を浪費する負債」だと書かれています。
また、『本当の自由を手に入れる お金の大学』では「リセールバリューが高い家を買うのは難しいから、賃貸に賢く住もう」と助言しています。
金銭面以外でも、隣人のトラブルや予期せぬ家の欠陥が見つかったとき、持ち家だと手放すのが大変です。
その点、賃貸ならすぐに引っ越すことができるので、リスクヘッジとなります。
負債となる持ち家を所有してしまうと、金銭面・精神面ともに貧しくなるのです。
家に限らずモノを買う時は「リセールバリュー(売るときにいくらで売れるのか?)」を意識することが大事です。
幸福の条件は、労働から解放されること
このいくらか自由な国に暮らしながら、大多数の人は、軽薄な心の動きとつまらぬ誤解から、仲間同士の争いや、なんのためにもならぬ過酷な労働に呻吟しています。そのため大多数の人は、人生が生み出す最高の果実を手にできません。人の手は、長く酷い労苦のために、硬く、鈍感になり、震えさえして、果実を掴もうにも掴めません。
世の中の多くの人は、過酷な労働によって人生の喜び・楽しみを奪われています。
仕事のストレスのせいで、人生を楽しもうにも楽しめなくなっているからです。
現代人は休日出勤やサービス残業といった長時間労働によって、余暇時間を楽しむための自由な時間を失いました。
また、職場の人間関係はうつ病を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
このように、仕事による苦痛が強すぎるため、多くの人は人生を楽しむ余裕が無いのです。
労働から解放されない限り、幸福を手に入れることはできないでしょう。
人生の果実(喜び・楽しみ)を手に入れるためには、何よりも優先して労働から解放されることです。
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