【書評】諦める力～勝てないのは、努力が足りないからじゃない。諦めれば、ラクになる

著者紹介

為末大さん。１９７８年広島県生まれ。

２００１年エドモントン世界選手権および２００５年ヘルシンキ世界選手権において、男子４００メートルハードルで銅メダルを勝ち取る。

陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。

シドニー、アテネ、北京と３度のオリンピックに出場。男子４００メートルハードルの日本記録保持者（２０１３年５月現在）。

２００３年、大阪ガスを退社し、プロに転向。２０１２年６月、日本陸上競技選手権大会を最後に25年間の現役生活から引退。

現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ（２０１０年設立）、為末大学（２０１２年開講）などを通じ、スポーツと社会、教育に関する活動を幅広く行っている。

著書に『走りながら考える』『走る哲学』『負けを生かす技術』などがある。

本の概要

「正しい諦め方・諦める重要性」について書かれた本。

多くの人は「諦める」ことに対して、ネガティブなイメージを持ちやすい。

しかし、何かの分野で成功するためには能力の絞り込みが必須であり、それ以外の分野を「戦略的に諦める」必要がある。

本当に欲しいものを１つに絞り込み、他のことを諦めれば、目的を達成できる確率は上がる。

自分が達成したい「目的」さえ諦めなければ、目的を達成するための「手段」は諦めても構わない。

目的を達成するためには、今いるフィールドに固執せず、自分が勝てるフィールドに移って努力することが重要である。

「目的を達成するためには、どのような努力をすればいいのか？」を学べる１冊。

こんな人におすすめ

学びになった点

「諦める」＝「明らめる」

「諦める」という言葉の語源は「明らめる」だという。仏教では、真理や道理を明らかにしてよく見極めるという意味で使われ、むしろポジティブなイメージを持つ言葉だというのだ。

「諦める」とは「明らめる」こと。

仏教の世界では「真理や道理を明らかにしてよく見極める」という意味で使われているようです。

私も同じように考えていて「諦める」とは、「自分に出来ないことを明確にする行為」だと思っています。

つまり「諦める」という過程を通して、自分をより深く知ることができるのです。

手段は諦めてもいい

多くの人は、手段を諦めることが諦めだと思っている。だが、目的さえ諦めなければ、手段は変えてもいいのではないだろうか。

目的を達成するためなら、手段はいくらでも変えていいと思っています。

なぜなら、目的を達成するための手段は１つではないからです。

著者の為末大さんは、「オリンピックでメダルを獲る」という目的がありました。

そのため「勝ちにくい」１００メートルを諦めて、「勝ちやすい」４００メートルハードルに変えて、メダルを獲得しました。

メダルを獲るという「目的」は諦めず、種目という「手段」を諦めたことで、結果を出すことができました。

多くの人は「手段を諦めること＝諦め」だと思っています。

しかし、目的さえ諦めなければ、手段は変えていいのです。

憧れの罠

自分の憧れる存在が本当に自分の延長線上にいるかどうかということを、しっかりと見極めるのは非常に大事なことになってくる。自分とはまったく接点のない人に憧れて、自分の短所を埋めているつもりが長所ごと削り取っている人はかなりの数に上ると思う。僕はこれを「憧れの罠」と呼んでいる。

憧れている人が「今の自分の延長線上にいるか」を、見極めることは重要です。

「自分の延長線上にいない人」にどれだけ憧れても、一生その人にはたどり着けないからです。

過去の私は自分で稼げる人間になるために、成功者が書いた本をたくさん読んできました。

しかし、どれだけ成功者の本を読んでも稼げるようにはならず、それどころか彼らと比較して自己嫌悪に陥っていました。

世の中の成功者たちは、自分の延長線上にはいなかったからです

多くの人の場合、天才の真似をしてもほぼ１００％失敗します。

「憧れの存在が、いまの自分の延長線上にいるか」これを見極めることが大事です。

自分が勝てるフィールドを選ぶ

人間には変えられないことのほうが多い。だからこそ、変えられないままでも戦えるフィールドを探すことが重要なのだ。 僕は、これが戦略だと思っている。

（中略） 極端なことをいえば、勝ちたいから努力をするよりも、さしたる努力をすることなく勝ってしまうフィールドを探すほうが、間違いなく勝率は上がる。

「だって、僕がこの分野に行けば有利なんだよね」

そこから考えることが戦略だ。孫子は「戦わずして勝つ」ことを善としている。勝つためには、最初から負けるフィールドを選ばないことが重要なのだ。

人生において「自分が勝てるフィールドを選ぶこと」が大事です。

自分が勝てるフィールドを選べば、大きな努力を必要とせず結果を出すことができます。

たとえば、私は「会社で働く」という不利なフィールドを選ぶと、結果を出せません。

しかし、「ブログ・YouTube・本の制作」といったフィールドを選ぶことで、大きな努力をしなくても少しずつですが結果を出せています。

このように、自分の強い部分を生かして、弱い部分で勝負しないことが大事です。

「自分はラクにできるけど、他の人にはできないこと」を主体とするフィールドを選べば、人生の難易度は下がります。

努力を娯楽化する

最高の戦略は努力が娯楽化することである。そこには苦しみやつらさという感覚はなく、純粋な楽しさがある。苦しくなければ成長できないなんてことはない。人生は楽しんでいい、そして楽しみながら成長すること自体が成功への近道なのだ。

最高の戦略は「努力が娯楽化すること」。

普通の人からすると、努力とは辛く・苦しいイメージがあります。

しかし、努力が娯楽になれば、楽しみながら成長することができます。

私の場合、ブログを書く、YouTubeの動画を作る、本の制作など。

これらは私にとって余暇活動の一環なので、娯楽のようなものです。

「楽しみながら成長すること」が、成功への近道です。

努力が報わるとは限らない

一生懸命やったら見返りがある、という考え方は、犠牲の対価が成功、という勘違いを生む。すべての成功者が苦労して犠牲を払っているわけではなく、運がよかったり要領がよかったりして成功した人のほうが実際は多いのではないだろうか。

「一生懸命やったら、いつか必ず報われる」という考え方は危険です。

なぜなら、その努力が報われるとは限らないからです。

努力が必ず報われるなら、努力した人は全員成功してるはずでしょう。

現実には同じように努力していても成功する人もいれば、しない人もいます。

成功には努力だけでなく、運や才能といった要素も絡んできます。

「努力さえすれば、いつか成功できるはずだ」という考えのままでは、その努力が報われなかったとき、大きな絶望を味わうことになるでしょう。

生きる道は１つじゃない

まずは、今見えているのとは違う人生があることをわかっておくことだ。そうすれば「これをやめたら自分ではなくなってしまう」という、追い込まれた状況にはならないはずだ。もし、懸命に走っている道で成功する確率がほとんどないとわかったとしても、その横に走っている人生に移ることができるのだということを理解しておくべきだと思う。

「生きる道は１つじゃない」という考えを、常に持っておくのは大事だと思います。

人生で行き詰ったとき、別の生き方を選ぶことができるからです。

「自分にはこれしかない」と思い込むと、その生き方がダメになったとき、人生に行き詰ってしまいます。

しかし「今の生き方がダメになっても、違う生き方もある」と考えれば、窮地に立たされても柔軟に対応できるでしょう。

視野を広げて「生き方の選択肢」を増やしておけば、人生のリスクヘッジになります。

勝者より敗者のほうが圧倒的に多い

実際は、勝者の背後には数えきれないほどの敗者がいる。多くの人は、がんばったのに成功しない敗者側に回らざるをえない。「やめなかったからこそできた」こう主張する少数派の言葉に嘘はないが、現実の社会においては、はるかに敗者のほうが多いという事実はわかっておくべきだ。

大抵の人は、頑張っても成功することはできません。

なぜなら、勝者よりも圧倒的に敗者のほうが多いからです。

１人の勝者の下には、何百、何千の敗者がいます。

「自分ならできるはずだ」と考えていると、現実は敗者のほうが多いので、成果は出ずに落胆するでしょう。

マスコミは勝者ばかり取り上げますが、その下には無数の敗者がいることを知っておくべきです。

ただ「合わなかった」だけ

「自分には合わなかった」本質的には、ただそれだけのことではないだろうか。自分が成功しなかったのは、その分野に合わなかっただけだ。ほかに合うフィールドがあるかもしれないから、諦めて、やめて、移動するのだ。

人生に挫折や失敗は付き物ですが、結局のところ「自分に合わなかっただけ」ではないでしょうか。

多くの人は結果が出ないと「もっと努力しないとダメだ…」と、自分を責めがちです。

しかし、努力して成功する人もいれば、成功できない人もいます。

結果で出ないのは努力が足りないとかじゃなくて、「ただ合わなかった」だけです。

１つの分野に固執せず、諦めて別のフィールドで努力したほうが、成功する確率は上がるでしょう。

人生はただの暇潰し

意味を見出そうと一生懸命考えていくと最後には意味なんてなんにもないんじゃないかと思うようになった。人生は舞台の上で、僕は幻を見ている。人生は暇つぶしだと思ってから、急に自分が軽くなって、新しいことをどんどん始められるようになった。たかが人生、踊らにゃそんそん、である。

「人生はただの暇潰しに過ぎない」と思っています。

なぜなら、「人生そのもの」に意味なんて無いからです。

私は以前「自分の人生に意味はあるのか？」と悩んでいました。

自分なりに出した答えは「人生そのものに意味は無い。ただの長い暇潰しに過ぎない」というものです。

「人生はただの暇潰しだから、自分の好きなように生きよう」そう思うようになってから、生きるのがラクになりました。

諦めなければ、手に入らない

「何も諦めたくない」という姿勢で生きている人たちは、どこか悲愴である。仕事も諦めない、家庭も諦めない、自分らしさも諦めない。なぜなら幸せになりたいから。でも、こうしたスタンスがかえって幸せを遠ざける原因に見えてしまう。むしろ、何か一つだけ諦めないことをしっかりと決めて、残りのことはどっちでもいいやと割り切ったほうが、幸福感が実感できるような気がする。

何かを諦めない限り、自分が欲しいものを手に入れることはできません。

なぜなら、自分の持っているリソース（お金・時間といった資源）には、限りがあるからです。

「あれも欲しい、これも欲しい」という状態では、すべて中途半端になってしまい、どれも手に入りません。

自分が諦めきれないものを１つ決めて、それ以外を諦めれば、手に入る確率はずっと上がるでしょう。

私は「働かず自由に生きられるなら、他のものは犠牲にしても構わない」と考え、月３万円で質素に暮らすことで、自由を手に入れました。

諦めきれないものを１つに絞り込み、それ以外のものを諦めれば、本当に欲しいものを手に入れることができます。

まとめ